外苑西通りが目の前を走る、昭和期特有のデコラティブな白い外壁のマンション「秀和外苑レジデンス」は令和と昭和が交差するタイムスポットにはまり込んだような不思議な存在感を放つヴィンテージマンション。1967年の建造物というから、すでに半世紀を超えて周辺の顔役を務めています。

ドラマのロケにも使われた「秀和外苑レジデンス」には人気ブランド「HUMAN MADE OFFLINE STORE」も

お粥と麺の専門店「粥麺楽屋 喜々(かゆめんがくや きき)」はこのマンションの1階。
看板のロゴや色味がどことなく中国や台湾の情緒を感じさせるお店に入店するなら、アイアンフレームの階段を上がってから。これがまた、建物のヴィンテージ感を高めると同時にこの光景を見た人の好奇心をかきたてることに一役買っているのです。

キリッとしたアイアンフレームの階段を上がるとお店の玄関へ

ギターやレコードジャケットが飾られた一見カフェ風の店内はランチタイムになると近所で働く人たちを中心に、お客さんがひっきりなしに訪れます。

店主の男性が「気がつけばオープンから19年も経ちました」と話すように、長年の人気の秘密は選び抜いた食材を使い、化学調味料も一切使用しないというポリシーのもとに作られた身体に優しいメニューが並んでいること。

お店のお粥は水とお米で作る精進料理を思わせるものとは異なり、鶏や魚介から出汁をしっかりとった濃厚なスープの中華風のお粥がメイン。どれも鶏、干し貝柱、数種の野菜スープの旨味がお米にしっかりと沁みこんでいます。

お粥は日替わりメニューをはじめ「鶏粥」「肉粥」「青菜粥」のほか「トムヤムクン粥」といった変わり種も。同じスープで麺(中華麺、米麺、こんにゃく麺からチョイス可)も楽しめます。

お粥に使うお米の量は600g。ランチタイムは無料で大盛り(650g)にもできる

丼いっぱいに入った鶏粥のスープをまずはひとくち。
滋味あふれる、やさしい味わいにしばし瞑目。
テーブルに備わっている黒酢と相性がよく、かけるとスープの長所をさらに高めてくれます。
後で聞いたところ、この黒酢に八角と一緒に火にかけて作られているとか。なるほど一風変わったエスニックな風味の正体は八角だったのかと、ひねり技に一驚。

ほぐした鶏の身がたっぷり入った「鶏粥」(880円)には黒酢を試してほしい

お店の“看板粥”で、多くの人が注文するのが「トムヤムクン粥」。
トムヤムクンが好きな人にはぜひ味わっていただきたいこのお粥は本場タイのトムヤムクンと比べても遜色ない仕上がり。大ぶりのクン(タイ語で「海老」の意味)のプリプリ具合にも満足。この日は雨が降り肌寒かったこともあり、トムヤムクン粥と麺を求める声がたくさん聞こえてきました。

大ぶりのエビが食べ応えある「トムヤムクン粥」(980円)。エビなしの「トムヤム粥」もある

また、プラス220円でサラダやドリンクのブッフェが付くのも嬉しいサービス。
サラダにかけるドレッシングも外食でまず出くわすことはないだろう、濃厚で一風変わった味わい。店主に尋ねたところ、「油を使いたくないので、このドレッシングを作りました。家でも簡単に作れるから、ぜひ作ってみてください」。

そのレシピは米麹と豆乳を半々ずつ入れ、オリゴ糖、柚子コショウで味付け。仕上げにアーモンドクラッシュを混ぜるというもの。材料さえ揃えば、簡単に作れそうです。

お粥は胃腸に負担をかけずに、水分と栄養分を体に届ける身体にやさしい食べもの。
体を温める効果もあるので、血液やリンパの流れがよくなり、免疫を高めることにもつながります。

「お粥はヘルシーというけれど、中華風のお粥はそれなりに具沢山でしょ?」という声が聞こえてきそうですが、喜々にはお米以外、何も入っていない「白粥」もあります。

お粥と麺の専門店ですが、1日10食の「チキンライス」も食したいメニュー。チキンスープや生姜と一緒に炊き込んだ玄米入りのお米とジューシーな鶏モモ肉を3種のソースでいただきます。
美味しいものとたくさん出会う機会が多いお正月明けの胃とおなかのコンディションをととのえてトライしたいものです。

information

粥麺楽屋 喜々
東京都渋谷区神宮前2-6-6 秀和外苑レジデンス1F
TEL 03-5474-6691
https://www.instagram.com/kayu_kiki/?utm_source=ig_embed&ig_rid=a4801199-b539-4121-bee4-9e25a3626c36