2024年の干支は龍。
初詣には龍神を祀る神社へ参拝された方もいらっしゃることでしょう。

城南地区で迫力満点の龍の像に出会えるのが北品川にある「荏原(えばら)神社」。
「品川宿の総鎮守」と崇められるこの神社は旧荏原郡(品川、大田、目黒、世田谷)で長い歴史があることから、1875(明治8)年に荏原を冠する社号になりました。

神社の傍に流れる目黒川に架かる朱塗りの「鎮守橋」を渡れば、ふくよかな東海七福神の「恵比須」像がお出迎え。その後ろには芽吹きはじめた御神木の寒緋桜が植えられています。なんと毎年2月に開花する早咲きの桜だそう。

恵比寿像の背後には御神木の寒緋桜が2本植えられ、冬場に見頃を迎える

この神社は709(和銅2)年に奈良の元官幣大社・丹生川上神社より高龍神(龍神)を勧請。1029(長元2)年に神明宮、1247(宝治元)年に京都八坂神社より牛頭天王を勧請しています。古くから「品川の龍神様」として親しまれ、源氏、上杉氏、徳川家などからも篤く信仰されました。

今年の干支ということもあるのか、参拝者が常に絶えない境内

のどかな境内に足を踏み入れると拝殿の前で神域を守る子沢山の狛犬(獅子)の美しく緻密な造形が目に飛び込んできます。この2体は1896(明治29)年の建立で、石工は栗原巳之助。子連れ型の狛犬は江戸時代に雄雌の造形が生じたことに派生し、子連れのデザインが生まれたという説があります。獅子の足の曲がり具合や毛並み、牡丹の細やかな意匠に石工のアグレッシブなエネルギーを感じます。

阿像の狛犬は親子が戯れている。親獅子の胸下や尻尾の彫刻が素晴らしい

さらには拝殿の美しさにも言葉を失います。
木鼻や左右の壁には龍をはじめ、動物や植物などの壮麗な彫刻が施され、まるで美の殿堂!

そしてお待ちかねの龍。
屋根の左右から「すべてお見通しだ」といわんばかりに睨んでおられます。
ちょっと唐突な登場という気もしますが、この龍は雨水を「天水桶」に落とす雨樋(あまどい)の役目を担っています。

社の上からひょっこり顔を出す龍。その全貌を見たい方は隣接する稲荷神社の境内へ

龍は水を司る聖獣。そもそも目黒川という水辺に神社が建立されたのも龍神との縁を感じますが、天水桶と共にこのような位置に配されているのはベストポジションといえるかも。

かつて防火用水として利用された天水桶に龍の雨どいから雨水を落とすという仕掛けだ

さて、荏原神社参拝後は龍にちなんだものをいただくために、あるお店に出かけました。荏原神社から徒歩で数分の場所にある、フォトジェニックなかき氷で知られる「いちょうの木」です。

オーダーしたのはこちら。

見た目も麗しい「辰年マスカット」(1,500円)。冬場でもお客さんは芸術的なかき氷を求めて行列を作る

今年の干支、龍が鎮座するかき氷は嘆息するほど芸術的。
トッピングの龍がデザインされた焼き菓子も店主の手作りで、かき氷にはシャインマスカットや蜂蜜、チーズソースなどが組み合わされ、後を引く美味しさ。隣席の方は追加で別のかき氷をオーダーされていましたが、その気持ちよくわかります。

以前紹介した「品川神社」が「北の天王」だとしたら、荏原神社は「南の天王」と呼ばれています。品川神社の双龍の鳥居、そして荏原神社の屋根から見下ろす龍。北品川は龍に守護されているのかも…と、かき氷を口に運びながらこの地に想いを馳せました。

今年の干支、龍がデザインされている絵馬。社務所では御朱印を求める人が多い

そういえば、龍は水を司る神さまでした。
かき氷が開運アクションとなりますように。

information

荏原神社
東京都品川区北品川2−30−28
03-3471-3457
http://ebarajinja.org/