大田区蒲田は区の行政の中心地であり、繁華な商業地でもあります。この街を通る鉄道はJR、京急、東急(池上線、多摩川線)で、その良い利便性が賑わいを作り出しています。

街の活気を生む要素の1つが「飲食」です。ここ蒲田はグルメの宝庫で、なかでも餃子を食べるために遠方からわざわざ足を運ぶ人も少なくありません。

蒲田駅東口から徒歩約4分。少々古めかしい公共施設の1階にある、元祖羽根付き餃子の店「歓迎(ホアンヨン)」もその1つ。平日のお昼時には近所で働いている人からお年寄りグループ、学生の姿が。週末になると子供づれのファミリーが目立つ店は、あっという間に席が埋まっていきます。

図書館や生活センターが入居する公共施設の1階にある「歓迎本店」。羽田空港や銀座にも支店がある

名物「元祖羽根付き餃子」(300円)は定食もありますが、あえて定食とは別に注文する人が多い一品。お皿からはみ出しているキツネ色の薄い皮がこのお店のスタイルで、目の前に置かれた途端、食欲にスイッチが入ります。

羽根付き餃子は漢方薬の入ったスープが隠し味に。5コ300円とリーズナブル

ツウは酢と胡椒で。酢に胡椒をたっぷりと振りかけるのがポイントです。

餃子の羽根は紙のように薄いですが、皮は厚めでもっちり。具材は豚と鶏を合わせた挽肉、白菜、干し大根、ニラ、ネギなどで、油断していたら今にも飛び散りそうな肉汁がジュワッとたっぷり!胡椒と酢のタレがその旨みを絶妙に引き出してくれます。食べ進むうちに、タレの入った小皿で受け止める「肉汁流出防止」の技も身につくはず。

ここで、なぜ「羽根付き餃子」なのかを説明しておきましょう。そのルーツは中国・大連の焼肉まん(水煎包)。お店の女将さんのお兄さん(蒲田の「你好」創業者の八木功さん。羽根付き餃子の生みの親でもある)が生まれ育った大連の肉まんの焦げ目がヒントになったといいます。このカリッとした焦げ目と食感を焼餃子に取り入れるため、開発した末に生まれたのがこの羽根というわけです。

また、蒲田は羽田空港に近いことから、餃子に「羽」を付けたという話も。ちなみに23区で一番面積が広いのは大田区で、その約3分の1を羽田空港が占めています。

お店では水餃子も食せます。実は中国で餃子といえば水餃子。「エビ入り水餃子」(500円)は羽根付き焼餃子と同じく、皮は厚めでもっちり。皮とつなぎがしっかりし、皮からショウガの効いた肉汁がもれることなく、さらにプリッとした海老の食感と旨みも加わります。こちらも想像以上に絶品。

中国東北部の味わいを感じさせる水餃子のほか、揚げ餃子もメニューに並ぶ
海鮮と青梗菜炒めの定食750円。ランチタイムの定食は550円~

ところで、中国で餃子は昔のお金に似ている形から「富をもたらす」食べものといわれ、全般的に「縁起が良い」ものとして好まれています。春節(旧正月)やお祝いの席では家族で餃子を作って食べ、幸せを願うという習慣があるそうです。

また、中国の食文化の影響を受けている北タイの料理「トゥントーン」(タイ語でトゥンは「袋」、トーンは「金」という意味)も揚げ餃子のような見た目で「お金に恵まれる」食べ物といわれています。しっかりした皮が袋になり、中身をもらさないところが餃子の縁起に通じるようです。

快活な女将さんが切り盛りする歓迎本店は1986(昭和61)年の創業。テレビの取材で訪れた芸能人の写真が所狭しと貼られた店内ではあちこちでスタッフの中国語が飛び交い、まるで中国の大衆食堂にやって来たかのよう。

蒲田には歓迎の他にも羽根付き餃子の名店があるので、食べ比べするのも楽しいでしょう。

コロナ禍で歓送迎会も制限されるこの頃。収束したら、心置きなく新しい仲間を歓迎すべく、皆で食事を楽しみたいものです。中華料理店は大勢で料理を囲め、たくさんの種類が食べられることから歓送迎会の会場に選ぶ人も多いですよね。幹事さんはメニューを選ぶ際に、人とのご縁を結ぶ願いをこめて「餃子」をお忘れなく。

information

歓迎本店

東京都大田区蒲田5丁目13-26 大田区生活センター 1F

TEL 03-3730-7811

https://www.kangeigyoza.com