京王井の頭線と小田急線が乗り入れる「下北沢」駅前。
京王線・高架下の内側に足を踏み入れるや空気を揺らすほどのどよめき!

それが「ミカン下北」。
「ようこそ。遊ぶと働くの未完地帯へ」をコンセプトに2022年3月30日に開業したこの施設は高架下という伸びしろを感じさせる立地、コンクリート打ちっぱなしのエッジの効いた外観が、下北沢のこれまでとこれからのカルチャーを牽引する場にふさわしいムードが漂っています。

開業からまもなくシモキタ駅前の顔となり、演劇や古着を愛するザ・シモキタラバー以外の老若男女をもトリコにしているミカン下北はA〜Eの5街区から成り立っています。
とくに駅前から伸びるA街区の高架下は“令和の長屋”が集まるトンネルのようで、タイやベトナム、台湾、韓国語の看板やメニューが並ぶ様は突如として異文化の海に放り出されたようなカルチャーショックを受けてしまうかも。

多くの店に通路に面した外席があり、アジアの屋台で食事をしているかのような体験が出来る

高架下の通路の途中には街路に面して大階段「だんだん」が設けられ、階段を越えるとシェアラウンジを備えた書店「TSUTAYA BOOKSTORE」。
ここは駅チカ好立地という環境も手伝い、モバイルワーカーの利用が目立ちますが、A街区には4・5階にもシェアオフィスも兼ねた「コワーキングスペースSYCL by KEIO」が。和食からアジアン、イタリアンまでのフードが楽しめる一方、シモキタらしい古着屋や書店、モバイルワークスペースも充実させるなど、コロナ禍以降のライフスタイルに沿っている点に、この施設の器用さがうかがえるようです。

シモキタらしく古着やアクセサリーが買える店も
階段の仕切りには劇団やライブのフライヤーがずらり。「フライヤー大作戦」と銘打たれ、休憩中の人達の視線を捉えて離さない

ランチタイムにひときわ行列を作っているのが「下北六角」。
このお店は三軒茶屋で数店舗を経営する「マルコグループ」の下北沢初出店の和食店で、ボリューム満点の定食が話題となり、人が人を呼び、人気を博しています。

開店前からこの大行列。人気ぶりがうかがえる

名物は限定25食の「銀鮭イクラ定食」(1,500円)。
ドリンク付きでビールも選ぶことができます。
ほどよい焼き色が目をそそる銀鮭に大根おろしと麗しいイクラがたっぷり。メニュー表に書かれた文字を凌駕する、なんとも説得力のあるビジュアル!
大ぶりの鮭は皮目はパリッ、中身はふっくら。旨みを引き立てるイクラと大根おろしの名コンビが、ご飯のおかわりを所望するほど、食べ進ませてくれます。

鮭は何とスマホより大きい。食べ切るのにご飯が足りない程で、昼休憩に訪れたと思しき女性もご飯をおかわりしていた

WBCで一躍人気者になったヌートバー選手を広告に起用しているメガネブランド「Zoff」もE街区に出店しています。実はZoffと下北沢は少なからず縁があり、Zoffが初めて出店した地がこの下北沢。
「メガネをTシャツのように楽しく掛け替える世の中を作る」という開店当初のコンセプトは今も健在で、朗らかなヌートバー選手のイメージと重なります。

店内にはヌートバー選手の全身パネルや別の表情のショットもある

Zoffに隣接するのは「図書館カウンター下北沢」。
ここは世田谷区立図書館が収蔵する200万点の蔵書の貸出・返却が可能なスポット。21時まで開館しているので、普段、図書館に行けない人には大変ありがたい存在です。

さて、ミカン下北が整備される前、京王線高架下には約200m²の空間をスチールフレームとフェンスで囲った期間限定のイベント広場「下北沢ケージ」がありました。
ちょうど、NYを思わせる外装デザインのB街区1階のカフェ「BROOKLYN ROASTING COMPANY(ブルックリン ロースティング カンパニー)下北沢店」の後ろ側にある自転車置場(C街区)あたりです。

駅からはやや離れているものの、カフェは人で賑わっている。外国人観光客らしき人の姿もちらほら

2016年から2019年まで、このイベント広場にはアジア屋台酒場「ロンヴァクアン」があり、タイの屋台で見かけるような赤や青のチェアをアクセントにテーブルが並べられた“シモキタのアジア”が広がっていました。その頃を知る人にとって、A街区でさまざまなアジアの料理が楽しめる光景が誕生したことは思い出の継承でもあり、下北沢とアジアンの親和性をより深める融和剤になっているような気がします。

ミカン下北の登場は人の流れを変え、今よりさらにハイブリッドなシモキタの発信地となることを予感させます。

INFORMATION

ミカン下北
東京都世田谷区北沢二丁目11-15 ほか
https://mikanshimokita.jp