よく「五感で感じることが大切」といいますが、フルに使っているのはどんな時でしょう。
ある人は温泉に行くと浸かる前に温泉水を飲み、またある人はレストランの料理がのったお皿を指でトントンと叩き、その音と感触が自分の感覚と相性がよいかどうかを試すといいます。このように主目的以外の感覚も“使ってみる”ことで、より感性は磨かれるように思います。

さて、五感というセンサーを研ぎ澄ます行為といえば「旅」を思う人もいるでしょう。
とくに現地でその地に暮らす人が作る食事は人間の営みそのもので、その国を五感でもって体験する案内役といえます。

今回、食(胃袋)のディスティネーションに選んだのは「ブータン王国」。
日本人によく似た顔、日本の昔ながらの農の風景を思わせる広大な段々畑、そして国の代名詞として有名なGNH(国民幸福度)などがよく知られるブータンですが、その料理が食せるのは代々木上原にある「ガテモタブン」。開業は2006年で東京はもとより、日本でも希少なブータン料理専門店です。

代々木上原銀座商店街の坂道を上った先にある4階建の「ガテモタブン」

ブータンの主食はお米。高山に囲まれた海がない国ゆえ魚介類よりは肉や野菜、チーズなどがよく食べられているそう。味付けはシンプルで塩、チーズ、バター、山椒などが中心。なお、殺生を良しとしないお国柄ゆえ、肉の販売を禁止する「肉無し月」(ただし、肉を食べることはOK)が設けられているのもこの国ならでは。

ランチタイムでメイン料理に選んだのは「パクシャパ」と「ジャシャマル」。
なにやら、おまじないの言葉を思わせる料理名ですが、パクシャパは豚バラ肉と大根の煮物、ジャシャマルはパクチーの入った鶏肉の炒め物で、どちらも素材の味を生かした日本のお米とも相性のよい滋味深いお味。(この時点で口に合う!と確信)

パクシャ(豚肉)パ(塊の意味)の豚肉は岩手県の岩中豚を使用
お米は富山県産の「てんたかく」。ほどよい粘りと甘みがあり、ブータン料理と相性がよい

「エマダツィ」は一見、ピーマンのスープと思しき見た目。
ブータン語ではエマが唐辛子、ダツィがチーズを意味します。
しかし、何気なく口に運ぶと…一瞬でファイヤー! はい、炎に包まれます。ピーマンに見えたのは唐辛子で、体温が2度ぐらい上がってしまいそうなほど容赦ない辛さ(>_<) これは何かの罰ゲーム?と涙目になってしまうほど。ちなみにブータンでは唐辛子は野菜として食べられるそうです。

ホットな辛さのエマダツィのマイルド版はジャガイモを入れた「ケワダツィ」

このエマダツィはチーズで唐辛子を煮て作られる、ブータンの味噌汁的な存在。つまりは「国民食」あるいは「ソウルフード」のポジションを占めているもの。
しかし、最近ではブータンではインドのスナック菓子が出回り、その味に慣れた若者の中には国民食のエマダツィが辛くて食べられない…という人もいるそう。

チベットやネパールでよく食べられている蒸し餃子「モモ」はブータンでもメジャーな料理です。モモの上にのせられているのは薬味「エツェ」といい、ブータン産粉唐辛子、山椒、玉ねぎを炒めたもの。

先のエマダツィの辛みから、もしかしたらこれも口の中が燃えさかるほどホットなのではとおそるおそる口にしたら…辛みの中に甘みがあり、山椒のピリッとしたシビ風味もうまく溶け合っている! この薬味はブータン料理といわず、日本の普段の食事に取り入れると爆発的ヒット商品になるかも。どなたか商品開発しませんか?

ブータンの薬味「エツェ」がたっぷりのった蒸し餃子「モモ」

ガテモタブンでは胃袋を通じてブータンを楽しみましたが、ぜひ一度は現地へ渡りたいものです。もしブータンを旅するなら、他国ではあまり例を見ない「公定料金制度」について調べておきましょう。

これは1日に定められた料金を支払うことでホテル、食事、ガイド、車、現地での体験などがパッケージになっているシステムです。と聞くと、観光のハードルが高そうに思われますが、現地で経験したいことを何でも相談でき、旅程に合わせてスケジュールを組んでもらえるので、内容によっては充実した旅になるのではないでしょうか。詳細はこちら

来たる3月6日は「世界一周記念日」。
五感を働かせるセンサーを磨きにかけるため、空の翼に乗ってブータンはじめ、シンパシーを感じる国へ飛んでみませんか。

information

ガテモタブン
東京都渋谷区上原1丁目22-5
03-3466-9590
https://www.gatemotabum.com