「ネパール料理」と聞くと、多くの方がネパール近隣の国、インドを連想して「スパイスたっぷりのカレー」と思うのではないでしょうか。
真実を目と舌で知るため、出かけたのは世田谷区豪徳寺の気楽な雰囲気が漂う商店街の一角にあるネパール料理店「OLD NEPAL」。2020年7月にオープンしたお店は今や人気店として知られています。入店には正午の開店少し前に置かれるノートに名前と人数を記帳するシステムが採用され、訪れた日もすでに数組がドアが開かれるのを待っていました。
お店の外観
日本のネパール料理店といえば、ヒンドゥー教の神様であるガネーシャやシヴァの色あざやかなポスターや雪を深くかぶったヒマラヤの峰々の写真が店内のあちこちに見られるのだろうと想像していましたが…お店に足を踏み入れた途端、その対極にあるようなスタイリッシュな店内に面食らってしまいました。
グレーとブラウンを基調にした店内で唯一、ネパールを連想させるのはカトマンドゥに林立する干ぼしレンガの家並みをイメージしたという壁とカウンター前面の仕切り。これは開店にあたりDIYで作られたそう。また「OLD NEPAL」という店名は古い歴史を誇るネパールに敬意を評して、付けられました。
お店で提供されるランチはネパール人が日頃からよく食べる「ダルバート」。ネパール語でダルは豆、バートはお米という意味で、真鍮製のプレートのまん中にご飯が盛られ、そのほとりを囲むように数種のおかずと豆のスープ、カレーが並ぶのが定番のスタイルです。
ダルバートをオーダーする際にはごはんの量(MもしくはL)、カレー(チキン、骨付き山羊肉、クンドゥルック<発酵させた野菜を使ったもの>、週替わり)からお好みのものを選びます。この日、選んだカレーは骨付き山羊肉とクンドゥルック(この日は発酵させた高菜が具材)。メニューには日本人にはあまり馴染みのないネパール料理の名前が並んでいますが、ご安心を。お店の方が料理について丁寧に解説してくれます。
おしゃれな内装
ほどなくしてダルバートが目の前に置かれると、白米を中心にした秩序ある配置にうっとり。まるで曼荼羅のよう!試しにダルバートが盛られた食器を持ち上げてみると想像以上にずっしりしています。
「最初にダール(豆のスープ)を一口すくって飲んで、その後はごはんにかけてください」とお店の方に教わったように、まずはダールからスタート。カドがなく、やさしい味わいのスープは、ネパールでは日本のお味噌汁のような存在です。
豆のスープをかけたごはんにナス、ジャガイモ、豆を使ったタルカリ(野菜の炒め煮)やサーグ(青菜の炒め物)を合わせ、時折、3種のアチャール(野菜を素材にした、酸味や辛味、風味などを付けるもの、ネパールでは一般的に漬物のくくり)を付け足すと、味わいがグッと変わり(最近の言葉でいえば「味変」?)口の中が彩り豊かに。
ダルバートのなかでメインディッシュといえるのがカレーです。骨付き山羊肉は実のところ独特のにおいを懸念していましたが、スパイスと合わさったせいか、においがいい感じに仕上がり、旨味が引き出されていました。 プリッとした山羊独特の食感も楽しめます。
もう1つのカレー、発酵させた高菜を使ったクンドゥルックを一口食すと、まろやかで濃厚な味わいに瞑目。普段、ベジタブルカレーをオーダーしない方でもじゅうぶんに満足できるはず。ネパールにも発酵の食文化があり、料理には発酵させた野菜を多用するそうで、OLD NEPALでも瓶に入った野菜を発酵させるため、自然光を当てながらディスプレイされています。クンドゥルックを味わうと、発酵がなす素晴らしい仕事に感銘を受けるでしょう。発酵は国境を超える!
自家製のコーラ
食後はネパール(インドでも)おなじみのチャイやクラフトコーラ、クルフィ(アイスクリーム)などが用意されています。見た目よりボリュームのあるダルバートを食し、「もう、おなかいっぱい!」とおなかを手でさすってしまいますが、その手がピタッと止まる引力をもつ数々。ぜひ味わってください。
OLD NEPAL
東京都世田谷区豪徳寺1-42-11
TEL 03-6413-6618