いまや週末の表参道・青山の風景の一部となっているマルシェをご存じでしょうか。

渋谷駅から「国際連合大学(UNU)」を目指して歩くこと約15分。
岡本太郎のオブジェ「こどもの樹」が見えてくると、その横には高層ビルが雄々しい国連大学前の広場を埋め尽くすようにアイボリーのテントがズラリと並んでいます。

そのマルシェこそ「青山ファーマーズマーケット@UNU」。
約60のテントの軒先にひしめくのは花や野菜、果物、パン、お菓子、スパイス、雑貨など。その周囲では約10台のキッチンカーがバラエティに富んだ食べものやドリンクを提供しています。

白いテントの下には色とりどりの商品が並び、売るひと買うひとの楽しげな声が行き交う
他にもヴィーガンバーガーやじねんじょドーナツ、とろろ飯など個性的なラインナップのキッチンカーが多い

まるで音楽フェスにやって来たかのようなユルめのお祭り感を感じる都会のマルシェ。テントの主は農家さんが一番多く、関東近隣のほか、四国や九州から出店している方もいるそうです。

多種多様な青果や加工品などが所狭しと並ぶテントの間を縫うように歩いていると、農家さんとお客さんのこんな会話が聞こえてきました。
「おはよう、〇〇さん!今年、会うのは初めてだよね」
「今年やっと来れたわ。今日オススメの野菜はどれ? このバッグに入れてね」

きっと農家さんと色々な会話をするうちに親しくなった方なのでしょう。
こんなやりとりが自然に発生するのも、ファーマーズマーケットの良いところ。

お花が並ぶテントでは春を告げる、変わり種のラナンキュラスやミモザも!
色とりどりの花たちに見惚れてしまいます。
冬季に明るい色の花を見ると心があたたまりますね。

こちらのお店では扱う野菜をわかりやすく陳列。
人参や大根、ネギなどのコーナーでは品種別に分け、大きさや形、色などを見て好みの商品を買うことができます。流通にのせられない規格外の生産物が安価に購入できるのが、マルシェの長所。

人参や大根にこれほどの品種があるとは!色や形などを比較できるようにディスプレイする農家さんを発見

笑顔で声がけをしている女性3人に出会いました。
日本大学生物資源科学部小谷ゼミ「江戸前ちば海苔プロジェクト」の皆さんで、毎月第3土曜日に出店しているそうです。

「千葉が海苔の生産地ということをご存じでしたか?実は200年以上続く伝統産業なんですよ。私たちのゼミでは『江戸前ちば海苔プロジェクト』を推進していまして、商品の企画・開発から市場調査、プロモーションなどを手がけています」。

江戸前ちば海苔の全国シェアは約2%で、大変希少なもの。
市場調査のためのアンケートに答え、説明を聞きながら生産者ごとに商品化された板海苔を食べ比べてみると、味の違いがわかり、同じ産地ながらも作り手によって海苔に個性が生まれることに驚き!

板海苔に加工される前の生海苔を使った「江戸前ばら海苔」はアフロヘアのような見た目。
サクサクとした食感でご飯にのせたり、麺料理や汁物の具材にもなるハイブリッドな商品は産学連携で開発されたもの。このマーケットでの収益は商品の仕入れなどに使われるそうです。

風味豊かなばら海苔は何かにつけ合わせるのは勿論、そのまま頂いても美味しい

ランチはテントの脇を固めるキッチンカーへ。
まず、空腹中枢を刺激してきたのはグリルされた鶏肉の黄金色のカリカリした皮目がたまらない「ロティサリチキン」。

お店の方は「少し前なら、チキンを並べて焼き上げているところをお見せできたんですが…」と仰っていましたが、容器にはみ出さんばかりに盛られた大ぶりのチキンに圧倒されました。

キッチンカー1台1台は小さいが漂ってくる良い匂いはマルシェ中に広がっていて、気付くとお腹が鳴ってしまう
贅沢に載せられたチキンがずっしりと重たい「ロティサリチキン」(800円)。

とても冷え込んだ日だったので温まるものを、ということで選んだのは「タイ・ヌードル」。少し辛味を感じさせるやさしい味わいのスープと麺に心和みました。

ほかほかと湯気の出る「タイ・ヌードル」(850円)を啜ると、寒い真冬でも体内からぽかぽかに。食べながらマルシェを眺めるのも醍醐味のひとつかも?

2009年から始まった青山ファーマーズマーケットは国連大学前の敷地に農産物を扱う市場を作りたいという、NPO法人「ファーマーズマーケット・アソシエーション」の想いから始まりました。

同NPOは現在も運営を手がけ、マーケットの中央部には事務局のテントが立ちます。
なんだか、フェスのPAブースを思わせる雰囲気。心地よい音楽を流し、スタッフの皆さんも楽しんでいる姿勢が自由度の高い、リラックスした空気がたなびくマルシェを作っているのかもしれません。

今でこそ、都会に暮らす人と農の出会いの場を提供する週末のファーマーズマーケットとしての認識が定着していますが、始めた当初は4店の出店のみだったとか。それが今では1日の出店が60を数え、来場者は1日1万人を超えることも。

スーパーの青果売り場で「私たちが作りました」という顔写真入りの表示をしばしば見かけますが、ここでは言葉を交わす楽しみが待っています。食べ慣れている野菜の別の顔を知ることができるかもしれませんよ。

INFORMATION

青山ファーマーズマーケット@UNU
東京都渋谷区神宮前5-53-70  国際連合大学前広場
毎週土曜日、日曜日(10時〜16時)
http://farmersmarkets.jp