小田急線・京王線「下北沢」駅前からのびる南口商店街。飲食店や携帯電話ショップ、ドラッグストア、雑貨屋などがひしめく、“シモキタ”らしい通りを抜け、しばらく歩くと「つきまさ」が見えてきます。

喫茶店を併設する日本茶専門店である、このお店は1973(昭和48)年の開業。選りすぐりの煎茶や玉露、玄米茶といった日本茶や茶器類が販売される店頭の奥にはカウンターが走り、テーブル席が並ぶ落ち着いた雰囲気の喫茶空間が広がっています。

日本茶専門の喫茶店と聞くと「襟を正して」行く場所というイメージのある方もいらっしゃるかもしれません。しかし「つきまさ」はそんな肩ひじの力は無用。コーヒーを飲みに行く感覚で気軽に利用できるお店なのです。メニューも高級な玉露や煎茶、庶民的な玄米茶やほうじ茶、なかにはバター茶といった珍しいものまで、幅広く揃っています。

静岡県掛川市で生産された煎茶「茶楽」

この日、選んだのは静岡県掛川市で生産された煎茶「茶楽」。3種用意されている煎茶をどれにするか決めかねていたところ、店主から「渋みと旨みのバランスがとれているなら、こちらがおすすめです」とアドバイスいただきました。

煎茶をオーダーすると、たくさんの和菓子がのったお盆が運ばれてきます。

おせんべいやあられをはじめ、麩菓子、薯蕷饅頭、干菓子など、さまざまな種類のお菓子が並んでいます。つきまさのお楽しみである、心ときめく瞬間!このなかからお気に入りを1つ選びます。

しばらくすると、煎茶の入った湯のみ、急須、湯冷ましのお碗、先ほど選んだ和菓子がセットされ、運ばれてきます。同時にお代わり用のお湯が入ったポットが置かれると、いよいよ日本茶を楽しむ時間がスタート。

選べる和菓子

さっそく、目の前の煎茶を口に含み、味わいを楽しんでみました。

まろやかな旨みに渋みが加わったお茶はややぬる目に淹れてあり、喉もとを過ぎると、心がほどけていくよう。後で店主にうかがったところ、煎茶を最初に淹れる時は60〜70℃ぐらいのお湯が、茶葉の持ち味を生かせるとのこと。2杯目以降は自分でポットのお湯を注ぎ、自分流で楽しむのがこのお店のスタイルです。

煎茶のお供は亀をかたどったあられと鶴が描かれた干菓子です。小さな木皿に並んだ縁起のよい意匠のお菓子は、新春を愛でるために用意された期間限定のもので、どちらも煎茶とよく合い、日本茶の旨みを引き立てる味わいに感服。

鶴と亀の和菓子

なお、このお店では急須、湯冷ましなどはすべて有田焼の茶器が使われています。店主によると「有田焼は飲み口が薄いので、自分の手で持てるぐらいの熱いお茶に適しています。煎茶が美味しく飲めるのは60℃前後ですから、有田焼の湯のみが合うんですよ」。

トーンが落とされた照明が居心地のよさを作る店内では東京FMの番組が終始流れていることもあり、初めて訪れた人でも馴染みやすい空気がたなびいています。

お店を後にする頃「お店で出される日本茶は何杯まで飲める(淹れる)ものですか?」そう尋ねると、店主はやわらかな笑顔でこう返してくれました。

「皆さん、だいたい3杯から5杯は淹れてらっしゃいます。なかにはお湯のポット(750ml)を2回、お代わりされた方もいらっしゃいました。美味しく飲むためにはお湯はこの温度で、お代わりは何杯までといった作法にとらわれず、日本茶を楽しんでほしいですね」。

 

喫茶つきまさ

東京都世田谷区代沢5-28-16

TEL 03-3410-5943

www.tukimasa-simokita.com/cafe