時代に迎合しない、聖なる立地。

佇んで天を仰ぐと東京オペラシティタワー、新宿パークタワー、東京都庁という新宿副都心を形作っている、平成の顔役的な高層ビル群がこちらを見下ろしている…。

新宿副都心の高層ビル群を眺められる荘厳寺の境内

そんな空間に遭遇できるのは初台駅から徒歩約6分の荘厳寺(しょうごんじ)の境内。不動尊を祀る風格あるお堂はまずその色に驚きます。カンタンにいえばパステルピンクですが、日本の伝統色である「鴇色(ときいろ)」を用いたくなるのは、このお寺が刻んだ暦を思えばこそです。

東京オペラシティや新国立劇場の裏側に位置するこのお寺は1561(永禄4)年の創建。安置されている不動尊は天慶年間に平将門を討滅した平貞盛・藤原秀郷、永禄年間には武田信玄、北条氏政等の手を経て、1747(延享4)年、霊夢のお告げに従って多摩郡宅部村(現在の東村山市)の三光院から遷祀されたもの。このことから「幡ヶ谷不動」として親しまれるようになりました。 この日も、ぽつぽつとながらも不動明王を祀るお堂にお参りする人が途切れず、ここが地元の人たちの心の拠り所となっていることを感じました。

不動明王は「お不動さん」と呼ばれ、観音や地蔵とともに信仰の対象として人気の高い存在。しかし、仏教界のアイドル…と言い難いのは温和な顔の観音や地蔵と異なり、憤怒の表情で対面した瞬間、畏怖の念を抱かせるような「コワモテ」だから。(もし存在するなら、テヘッと笑った不動明王像を眺めてみたいかも…)

本堂近くにある不動明王の石像

密教のご本尊「大日如来」の化身として悪魔を降伏するために恐ろしい姿と化し、右手に倶利伽羅剣を持ち、障害を打ち砕く役目を担っているのがお不動さん。アマビエ同様、「疫病退散」にご利益があるといわれ、コロナ禍の現在、終息を願ってお不動さんに参拝する人が増えているそうです。

さて境内の左奥、狛犬が守る山門を入ると見える、荘厳寺のご本尊・薬師如来を祀る本堂も足を運んでほしい場所。樹木と石仏、常夜燈が配された、こぢんまりとした居心地のよい聖域を形作っています。

荘厳寺本堂へと続く参道
弘法大師像や石仏、常夜燈などが配されている

常夜燈はかつて、甲州街道と明治通りが交差するところに置かれていた道標で、台座には「十二社熊野神社」や「大宮八幡宮」「井の頭弁財天」までの距離が刻まれています。また、多くの人の名前も刻まれ、当時の道標の役割―スマホの道案内なんて誰も想像できなかったでしょうーが貴重なものであったことを伝えてくれます。

昔は道標の役割を果たした常夜燈

幡ヶ谷不動を冠した「不動通り」は約1kmの商店街。お洒落なカフェや昭和の頃を思わせる美容院や時代と寄り添ってきたようなお米屋さんなどが交錯しています。

「ランチなら、ぜひこの通りを凝縮したようなお店で」と地元の人にご紹介いただいたカフェに入るとなるほど、ノスタルジックなムードがたなびくお店でした。

地元の人に質量ともにコスパがいいと評判の「アジヨシカフェ」の日替わり定食

ぽっかりと令和という時代を忘れそうなほど、古き良き趣のある商店街とこの通りを守り続けてきた不動尊。いかにも「昭和」という時代の風情が漂うこの場所が永遠であってほしい…そんなことを願うのは地元の人だけではないでしょう。

information

荘厳寺

東京都渋谷区本町2丁目44-3

TEL 03-3376-6991