都市にある公園の「格」を決めるもの。
それは緑と水の量ではないでしょうか。
そんなことを想起させるのが三軒茶屋駅、池尻大駅、祐天寺駅から徒歩圏内にある「世田谷公園」。
鬱蒼と茂る杉の巨木やケヤキ並木が続く森のゾーンや小ガモの住処もある噴水広場など、緑と水のボリュームに気圧されることなく、心地よさがみなぎっています。三軒茶屋の隣町、駒沢にある「駒沢オリンピック公園」がレッドカーペットの常連俳優を思わせる華やかなスター級の公園だとしたら、世田谷公園は邦画の名作で助演男優賞に輝く、性格俳優のような存在感。
世田谷公園の入り口は数ヶ所ありますが、三宿通りに面した入り口は公園の“顔役”。
園名石の周りは四季折々の花で彩られています。
階段を上がり、前進すると、目に飛び込んでくるのは大海原を泳ぐクジラの豪快な潮吹きを思わせる噴水。
豊かな水をたたえる六角形の池を囲む芝生やベンチは早朝は愛犬を連れてお散歩する人の休憩スポットであり、昼間はランチタイムをここで過ごす人もいます。そして初夏から夏にかけてはここに寝そべって日光浴をする人の姿もちらほら。
自然と親しめるエリアのほか、園内には弓道場やテニス場、野球場、プール、ストリート系のスケートボード場なども整備され、日中はスポーツを楽しむ人たちで賑わっています。
週末を迎えると、ファミリーやカップルの姿がひときわ目立つのが、小さいながらも駅舎とプラットフォームも備えた「ミニSL広場」。
実物の約5分の1に縮尺されているミニSL「SLチビクロ号」に乗車できることもあり、乗車日(水、土、日)にはこちらを目当てに訪れる人がたくさん。
この記事でも紹介していますが、東京オリンピック2020大会の馬術競技で使用された障害物も設置されています。
ミニSLは約280mのレールを一周し、その所要時間は約2分半。「ミニSLなんて子どもが楽しむもの…」と思いきや、想像以上に冒険心が掻き立てられ、何より目線の高さが新鮮!ぜひ一度、乗車してみては。
ミニSL広場の横には子どもたちが焚き火をしたり、楽器を奏でたり、大人も遊具で遊ぶことができる「プレイパーク」が広がっています。
さて、世田谷公園のあまり知られていない一面が「平和の尊さ」を伝える場であること。
園内には「平和資料館」があり、平和やSDGsに関する企画展のほか、常設展示室では第2次世界大戦や戦争時の世田谷について学べる、さまざまな資料が展示されています。
館内にはライブラリーもあり、ここには原爆投下された広島や長崎を舞台となった本や漫画など約3000冊の蔵書、ビデオ、DVDなどが揃っています(貸し出しも可能、詳しくはこちら)
「タイムカプセルの丘」のふもとで木陰を作る2本の「被曝2世の木」にもぜひ、ふれてみてください。
噴水広場を背にして、右側が広島で被爆したアオギリ、左側が柿の木。
どちらも原爆の熱線を浴びた木から採取した種子が発芽し、苗木が植樹されたものです。
2023年5月、「G7サミット」が被爆地である広島市で開催され、ウクライナのゼレンスキー大統領も来広したこともあり、より戦争のない平和な世の中になることを多くの人が心新たに願っています。この公園を訪れた際にはぜひ、平和資料館や平和を願うモニュメント、広島と長崎の木々をご覧になってください。
ところで、公園のある三宿通りはグルメなお店が集まっているエリア。
気に入ったお店でランチタイムを過ごす楽しみも待っています。
絶品のインドカレーが楽しめるのは「スパイスマジック 下馬店」。
テレビ番組のカレーチャンピオンに輝いたダルジット氏の似顔絵が描かれた看板が目印のお店では北インドの味わいを求めて遠方から訪れる人も多く、昼夜問わず、多くのカレーファンの胃袋をつかんでいます。
あらゆる生命につながる緑と水に恵まれた世田谷公園。
豊富な自然をたて糸に、平和をよこ糸に織り込んだような地域に愛される公園を散策してはいかがでしょうか。
information
世田谷公園
東京都世田谷区池尻1丁目5ー27
03-3412-7841(世田谷公園管理事務所)
https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/kusei/012/015/001/002/d00004239.html