東急東横線「学芸大学」駅から西口商店街を約3分進むと、左側にオーディオ製品が並ぶ大きなショーウインドウに出くわします。
前を通り過ぎる人にとっては“オーディオのある風景”なのかもしれませんが、愛好家にとっては垂涎ものの逸品が並ぶこのお店こそ、老舗オーディオ専門店である「株式会社ホーム商会」。

今回は現役のアーティストをはじめ、音楽関係者やオーディオファンまで、多大な信頼を集めるホーム商会の代表取締役、船橋康雄さんに音響製品や自宅にオーディオルームを作る際のヒントについてお話をうかがいました。

1952年に青山で創業し、1964年に国道246号拡張のため、現在の学芸大学に移転したホーム商会の代表取締役社長を務める船橋さん。もともと他のオーディオ専門店に勤めていましたが、この会社に転職したのはホーム商会を創業した初代社長からのスカウトだったそうです。

「学芸大学はどこに行くにも便利」と話す船橋さん。仕事が終わると六本木のジャズバーに繰り出すこともあるそう

船橋康雄さん(以下、船橋)

当時、私は目黒の「オーディオサロンJBL」の店長を務めていました。どこかから私のことを聞いたホーム商会の社長がある日突然現れて「うちで働かないか」と。JBLで毎月1,000万円以上売り上げていたから、白羽の矢が立ったのでしょうね。そのご縁で1983年からホーム商会で仕事をしています。

私自身、子どもの頃から音楽が好きだったんです。クリームやエリック・クラプトンなど、何度レコード盤に針を落としたかわからないほど。加えて父はクラシック、兄はジャズに傾倒し、家では常に音楽が流れていました。父は音楽を楽しむなら品質の良いオーディオ製品を選ぶ“聴く環境”にも凝るタイプ。そのおかげで音楽とオーディオに興味をもち、とことん追求した結果、現在があるのかもしれません。

43坪の店内に足を踏み入れると、目の前には「バーカウンター」と見まごう、JBLのヴィンテージスピーカー(1957年製の初期型)「パラゴン」が。JBLの名機といわれるパラゴンは1957年から1983年までに約1,000台が製造され、初期型を扱っている専門店は希少。そんな国内外のハイエンドから手頃な価格のオーディオ製品まで扱っているのもホーム商会の魅力。時に船橋さんは新築の家に作るオーディオルームの設計に関わることもあります。

JBLのヴィンテージスピーカー「パラゴン」。こちらは非売品だが、たまに値段を訊いてくる方もいるそう

船橋
新築のお宅にオーディオルームを作る時には施主、設計者、私が設計段階から打ち合わせます。オーディオルームは地下に設け、長方形でコンクリートの直打ち、高い天井、防音扉、オーディオ専用回路のアース付きコンセント、壁や天井にわずかに勾配があるのが理想。ある意味、部屋もオーディオの一部と考えてよいでしょう。

空間全体にしっかりと音を届けるためには反射音を上手に活用することを考えなければなりません。
実はオーディオの音はその多くが部屋の反射によって作りだされるもの。
コンサートホールに行くと壁や天井が波型になっていたり、傾斜していますよね。フラッターエコーや定形波対策なのですが、それを自宅でも実現させるのです。

壁が途中から斜めになっているのはこの為。視聴環境も完璧に整っている

オーディオルームのフロアには毛足の短い絨毯を敷くのも良いですね。高音域の音を吸収するのに優れているからです。何も敷かない時よりも重低音が強調されます。

もし、これから自宅にオーディオルームを設け、好きな音楽に心地よく浸りたいという方がいらしたら、部屋の設計も予算に合わせたオーディオ製品の相談にものりますよ。

ホーム商会にはハイエンドの製品を購入し、地方への出張を依頼する人もいれば、近所に暮らす女性が「新しいマンションに引っ越したから予算30万円以内でオーディオ製品を揃えてほしい」という相談にも訪れるなど、幅広いニーズがうかがえます。

船橋
音楽を聴く際には「CDプレイヤー」「アナログプレイヤー」「ネットワーク・オーディオ」などの機器を使用します。基本的にはそれらに加えて「プリアンプ」「パワーアンプ」「スピーカー」を揃えることを提案します。

けれど、部屋にあまり多くの機器を置きたくないと考える人もいますよね。そんな時にはプリアンプとパワーアンプの両方の機能を兼ね備えた「プリメインアンプ」をすすめることもありますよ。依頼されたらお宅までうかがい、オーディオの設置やケーブルの配線まで手がけます。

お店ではアナログレコードやアメリカの「モービル・フィデリティ・サウンド・ラボ社」のアルバムも販売。オリジナルのアナログマスターを独自の技術でリマスターした高音質に定評がある、モービル・フィデリティの限定ナンバリングのイーグルスやスティーリー・ダンのアルバムは船橋さんの目下のお気に入りです。

裏に限定ナンバリングがついている「モービル・フィデリティ・サウンド・ラボ社」の貴重なアルバム

取材終盤には船橋さんの計らいでイーグルスの『テキーラ・サンライズ』『デスペラード』をお店の奥まったオーディオルームで視聴できることに。日本のハイエンド・オーディオメーカー「エソテリック」のCDプレーヤー、「マッキントッシュ」のプリアンプ、モノラルパワーアンプ、そして「マランツ」の真空管アンプで聴くイーグルスの名曲は大音響ながらも心地良く、音の海をたゆたっているような快感。音響機器でこれほど曲の印象が変わるとは!

「オーディオからの低周波は身体にも良いんですよ」と船橋さん。音のあまりの心地よさにうとうとする方もいらっしゃるそう

船橋
CDやレコードはそのアーティストがレコーディングした国の原盤の音が一番良いと思っています。好きな海外アーティストの作品を現地からわざわざ取り寄せることもありますね。

さっきのイーグルス、良かったでしょう? 左右のスピーカーから流れる音を心地良く聴けるようセッティングしているほか、秘密の機器を使っています(笑)。「クリーン電源」(アキュフェーズ社)です。これは電源ノイズを排除する役目があり、オーディオの音質を驚異的に改善するんですよ。

「クリーン電源」(アキュフェーズ社)。目立たない所に置いてあり、まさに縁の下の力持ちといったところ

知れば知るほど、奥が深いオーディオの世界。
ホーム商会で実際にオーディオ機器にふれると、音楽を愛する人々が音響システムや音空間をとことん追求する理由がわかるような気がします。音響システムや空間が異なるだけで聴こえ方が全く違う…。目(耳)からウロコの体験でした。
音響システムに興味のある方や自宅のオーディオルームをお考えの方はぜひ、足を運んではいかがでしょう。

船橋康雄さんからのメッセージ
オーディオに関しては50年以上の経験があり、音楽についても知識があります。
ホーム商会はオーディオマニアの聖地というような言い方をよくされておりますが、これからオーディオを揃えていきたいといった初心者の方でも、お気軽にご相談いただければどこにも負けない最高の提案をさせていただきます。
お気軽にお問い合わせください。

INFORMATION

株式会社ホーム商会
東京都目黒区鷹番3-21-21
TEL 03-3711-0600
https://www.homeshokai.jp