東急東横線「学芸大学」駅のランドマークの1つ「碑文谷公園」。公園の中央に池があり、ボート遊びも楽しめるこの公園から目黒通りへ。イオン碑文谷店の交差点を渡ると「サレジオ通り」と書かれた標識が見え、その先には閑静な住宅地が広がっています。この通りをしばらく歩くと、現れるのが「カトリック碑文谷教会」です。

白い外壁にパステル調のピンク色が親しみやすさを感じさせる外観

「サレジオ教会」とも呼ばれるロマネスク洋式の教会は1954(昭和29)年に建造されました。鐘塔の高さは約36m。このあたりでは見上げるほど背の高い建築物ですが、白い壁にピンク色がアクセントに使われた外観は壮麗であり、親しみやすさも感じさせます。ちなみに「サレジオ」の名前はイタリアに本部のあるカトリック教団「サレジオ会」が運営していることから。

教会には信者でない人も入ることができます。

白い外壁に守られている、ほの暗い聖域に一歩足を踏み入れると、そこは厳かな雰囲気に満ちた空間。大理石の祭壇にフレスコ画が描かれたアーチ状の高い天井、左右の壁には鮮やかな光を放つステンドグラス。

パイプオルガンの調べに包まれると、心の波が次第に穏やかになっていく感覚を味わえるでしょう。この聖なる場所にずっと浸っていたい…。それがこの教会の求心力です。

さて、この教会は中世のイタリアで描かれた1枚の聖母(サンタ・マリア)画のレプリカを所有していることでも知られています。それは江戸中期に屋久島へ布教のために上陸したイタリア人神父・シドッティが持っていた銅板画に由来するもの。密入国の罪で捕えられ、殉教したシドッティが所持していた聖母画(絵の題は「悲しみの聖母」)が偶然、サレジオ教会が建てられた1954年に見つかったこともあり、この絵のレプリカが作られました。

やがて中世イタリアの聖母画は江戸時代のキリシタン弾圧と殉教の歴史を伝えるべく、この教会の礼拝堂に飾られることになりました。こういった背景から「江戸サンタ・マリア」教会と呼ばれることもあります。

クリスマスシーズンは教会の前に飾られた「プレゼピオ」に足を止める人も多い

クリスマスシーズンを迎えると、教会には電飾がきらめき「プレゼピオ」(イエス・キリストが誕生する場面を描いた飾り)がお目見えします。この飾りはサレジオ通りを行き交う人の目を引くようで、教会の近所に住む女の子は父親と共に自転車を降りて「この赤ちゃん、可愛いよね!」と話しかけてくれました。

サレジオ教会では生活困窮者に食料を提供する「フードバンク目黒」の配布会場をはじめ、古本市やバザーなど、地域活動も積極的に行っています。信徒以外の人たちも沢山集まることで知られています。

教会では不定期で古本市やバザーを開催。クリスマスシーズンにはクリスマス用品も販売される

美しく厳かな教会での祈りの時間。それはこの1年を振り返る時間になるかもしれないし、来たる年の希望を静かに描く時間になるかもしれません。

Information

カトリック碑文谷公園
東京都目黒区碑文谷1丁目26−24
TEL03-3713-7624
https://himonya-salesio.jp/