梅の季節がやって来ると、「今年こそ梅仕事をしてみたい」と思う人は少なくないはずです。でも干す場所がない、忙しくてタイミングが合わない、なんだかハードルが高そう…と感じる人もいらっしゃるかもしれません。
都会暮らしと梅仕事の間にある、その“ちょっとした距離”を縮めてくれる場所が経堂にあります。

「山とハチミツ」。
6月下旬、ミツバチと植物の共存共栄をテーマにしたお店で「蜂蜜梅干し仕込みワークショップ」に参加しました。(参加費は蜂蜜発酵ランチプレート付きで7,700円)
今回のワークショップで使用する梅は、小田原が誇る高級品種「十郎梅」。
真美耕農園で育てられた無農薬・化学肥料不使用の梅です。果肉が柔らかく、上品な酸味と豊かな風味を持つ十郎梅は、その繊細さゆえに流通量が少ない品種。そんな希少な梅を蜂蜜と塩とともに仕込みます。
店主の田中央枝さんが講師を務めるワークショップでは冷凍した梅を使用します。
冷凍するメリットは梅の繊維が壊れ、梅酢が早く上がりやすくなること。
また、冷凍保存しておけば自分の好きなタイミングで梅仕事ができます。
念願の梅仕事!蜂蜜梅干し仕込みワークショップに参加
当日、白加賀梅ジュースのウエルカムドリンクで迎えられた後、田中さんから作り方の説明を受けます。

材料 冷凍梅1kg、塩100g、蜂蜜100g
①今回は2つの保存袋を用いて作りました。
1つの保存袋に冷凍梅(500g)を入れ、塩(50g)と蜂蜜(50g)を加えます。
今回用いた蜂蜜はブラジル産のマメ科(オーガニック)のもの。
「自宅で作る場合は海塩がおすすめ、蜂蜜はアカシアが風味よく仕上がると思います」と田中さん。

② 持ち帰った袋は、梅酢が出てくるまで、毎日2つの袋の上下を返して全体に塩とハチミツが行き渡るようにしましょう。梅酢がしっかり上がってきたら、今度は袋を立たせて梅が梅酢に浸かった状態を保ちます。

③ 干す場所がある方は、梅雨明けの晴天が続く時期に天日干しを。ざるや干し網に並べ、風通しのよい場所で数日間(陽射しの強い日は1日)干すことで、梅独特のやわらかくとろりとした食感が生まれます。干す場所が確保できない場合は、梅酢に浸けたままの状態で冷暗所に保存するのもOK。
仕込み作業自体はシンプルそのもの。
塩だけでなく蜂蜜を加えることで塩分が控えめになり、食べやすい仕上がりになります。


「梅にはクエン酸による疲労回復、食欲増進、殺菌作用、食中毒予防、さらにはポリフェノールによる抗酸化作用など、夏を乗り越えるための力が詰まっています。蜂蜜を入れるからといって甘すぎることはありません」と田中さんは話します。
帰宅後に生じる疑問には公式LINEで答えてもらえるため、初めての方も安心して取り組めます。
ワークショップ後のお楽しみ!蜂蜜発酵ランチプレート
ランチタイムは田中さんが丹精込めて漬けた大ぶりの梅干しを調味に用いたスープをはじめ、モチモチ食感のおにぎり、ひじきとひき肉の煮物、梅酢を用いたお漬物、お豆腐のデザートなどの「蜂蜜発酵ランチプレート」か楽しめます。
梅酢、梅醤油、梅味噌、蜂蜜梅ペーストも登場し、梅がこんなにも多彩な表情を持つのかと、お箸を動かすたびに気づかされます。


料理が運ばれてくる合間、田中さんが食材の紹介や作り方を説明してくれるのですが、その場の空気はどこまでも和やか。参加者が思い思いに質問を投げかけ、自然と会話が広がっていきます。「参加された方同士が仲良くなるのも、うちのワークショップの特徴かもしれません」。

いただいた料理の中で気に入った食材があればその場で購入することもできるので、帰り道には手提げがひとつ増えているかも。

「私は長野生まれですが、子どもの頃は梅といえばカリカリ梅が当たり前でした。ところが結婚して夫の実家で漬けた梅を口にしたとき、そのやわらかさに驚きました。梅干しってこういうものだったのか、と」
そう田中さんは穏やかに笑います。

「梅干しは日本人の素晴らしい食文化のひとつです。でも都会暮らしでは忙しかったり、スペースの問題でどうしても作る時のハードルが高く感じられてしまう…だからこそ、もっと気楽に、楽しんでいただきたいですね。また、手作りに正解はありません。季節の手仕事はコツをつかんでしまえば意外と簡単。これなら続けられそう、と参加してくださった方が笑顔になる瞬間が一番嬉しいですね」。

今回は梅仕事のワークショップでお店を訪れましたが、店内には国内外から選りすぐりの蜂蜜が並んでいます。
「ミツバチがさまざまな花を訪れて集めた蜜を試食してから購入できるスタイルを大切にしています。蜂蜜の味は毎年異なり、その年の自然の表情がそのまま一瓶に宿っています」。
その言葉を聞いて棚を眺めると、ずらりと並んだ黄金色の瓶がどれもひとつの季節を封じ込めた愛おしい物語のように思えてきます。
また、お店の小さなお庭では蜜源植物を増やす活動も。ミツバチや植物とともに暮らすという姿勢が、お店や扱うすべてのものに宿っているようです。

さて、ワークショップから8日が経った朝、ついに梅の入った袋をそっと開けてみました。
途端にふわっと梅の良い香り。そして梅酢をまとった梅干しをひとつ、口に運ぶと―まろやかで、ほどよい塩気!
あの日、自分の手で仕込んだ梅が、こんなふうに変身するとは。
季節の手仕事とは未来に手渡す小さなギフトなのかもしれません。

information

山とハチミツ
東京都世田谷区宮坂1-14-8
03-6804-4333
https://yamatohachimitsu.com
