新茶の季節を迎えました。
日本茶の魅力をバラエティ豊かに伝える場所が、渋谷に息づいています。
そう聞くと、住宅街の一角にひっそりと佇む茶室を改装したカフェ、あるいは真ん中に炉を切っただけのミニマルな白一色の空間を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、そのイメージはいい意味で裏切られます。

このお店があるのは、いまや渋谷のランドマークのひとつともいえる「渋谷スクランブルスクエア」。国内外の人々が行き交い、彼らの熱量が渦巻くビルの一角で、1杯の日本茶から茶葉を使ったデザートまで丁寧に届けるお店の名は、「ocha room ashita ITOEN(オチャ ルーム アシタ イトウエン)」。

店内に足を踏み入れると、視界に飛び込んでくるのは茶の木。さらに、盆栽や鉄瓶、だるまの置物といった和の文化がさりげなく配され、空間自体がゆるやかに呼吸しているよう。
渋谷の真ん中にいるというのに、ジワリとした安堵感。心がふっとほどけていくのを感じます。

茶碗が並ぶ違い棚の下に配された窓台には種類の異なるお茶の木が生垣のように植えられている

このお店を手がける「伊藤園」は日常にお茶を届けてきた存在として知られています。
本社は渋谷にありますが、街との関わりはそれだけではなく、渋谷スクランブルスクエアからほど近い場所にある「渋谷区ふれあい植物センター」では、茶の木の栽培にも携わっています。

「渋谷区ふれあい植物センター」の屋上で栽培されている、伊藤園協力の「渋谷茶」(ネット掛けの部分)

この日はモーニングの時間帯ということもあり、オーダーしたのはモーニングメニューの「あんバタートーストセット」(1,100円)。抹茶風味のクロワッサン生地を使用したトーストの外側は軽やかで香ばしく、何層にもなった中身はもっちり。そこにあんことバターのコクが重なり、抹茶の軽やかな渋みが全体を引き締めています。シンプルでありながら、ひと口ごとに奥行きを感じる味わい。スープとサラダのサービスも嬉しいですね。

同じパンを使用した「ハムチーズトースト」など、甘くないメニューも。朝はスイーツ系メニューを食べない方にも嬉しいラインアップ
断面も抹茶色のトースト。モーニングメニューというだけあり、朝にちょうど良い大きさ

店内を見渡すと、ツーリストと思しき外国人の姿もあり、モーニングセットとともに朝のひとときを楽しんでいました。お茶文化が、国境を越えて共有されている光景です。

通路に面した席だけでなく、奥まった席で落ち着いてゆっくりお茶を味わうこともできる
本格的な茶器が並ぶ厨房近くにはカウンター席も

続いていただいたのは「抹茶わらびもち」(ドリンク付き、1,980円)。お皿の中央には削った氷があしらわれ、涼感が演出されています。口に運ぶと、わらびもちそのものの味わいがしっかりと感じられ、抹茶の風味がやさしく広がります。黒蜜ときな粉が添えられていますが「わらびもち単体でも充分美味しい」とは本企画者であり、撮影を担当したM嬢。
なお、「飲む抹茶わらびもち」というデザート感覚のドリンク(ドリンク感覚のデザートともいえる)も用意されているので、スイーツに目がない方は一度試してみてはいかがでしょう。

「抹茶わらびもち」(ドリンク付き、1,980円)。濃い抹茶色のわらびもちは、何と注文を受けてから店内で作っているのだそう
つるつるもちもちのわらびもちは、氷のおかげで長時間冷たさが保たれている

店内では、本格的に淹れられる日本茶を気軽に楽しむことができます。
単品でもオーダー可能ですが、ドリンク付きのセットで少しずつ味わってみるのもおすすめです。メニューには、「抹茶ラテ」や「ほうじ茶ラテ」をはじめ、「ほれぼれ(緑茶)」、「会席ほうじ茶」、「抹茶あわせ玄米茶」などが並び、それぞれに異なる香りや旨みを堪能できます。

セットドリンクとして選んだ抹茶ラテ。濃い抹茶の香りと優しいミルクの味わいが溶け合う一品

また、緑茶と抹茶の両方を贅沢に使った甘味も用意されています。
こちらは「ASHITA お茶パフェ」(1,320円)。

鹿児島県産の緑茶ゼリーと抹茶ババロアが美しい層をなし、ベリーとミルクアイスが彩りを添えています。口に運ぶたびにお茶の清涼感と冷んやりとした甘みが重なり合い、最後のひとさじまで飽きることなく楽しませてくれます。

中にはお茶漬けでお馴染みのあられも入っており、味や食感のアクセントとなっている

そもそも、お茶は私たちの身近にある飲み物ですが、とりわけペットボトル飲料の普及によって、「いつでもどこでも手軽に飲めるもの」になりました。「清涼飲料水統計2025」(一般社団法人全国清涼飲料連合会)https://www.j-sda.or.jp/statistically-information/pdf/2025jsda_databook.pdfによると、清涼飲料水の2024年の生産量は前年比1.6%増の23,596,300klで、過去最高をマーク。そのトップシェアを誇るのが茶系飲料です。
また、容器別ではペットボトルと缶、紙の合計シェアが過去最高となっており、 9割以上が即飲性の高い容器で占められています。
これらのデータを見ると、お茶の飲用は利便性の高いスタイルが支持される傾向にあるのかもしれません。

このような背景を考えると、お湯を沸かし、茶葉をひらかせ、香りを感じながらいただくお茶はその1杯に意識が集中し、心をととのえる作法のようにも思えます。

店内では抹茶から玄米茶まで、様々お茶を販売している。家でもまったりお茶時間を楽しんでみよう

手間ひまをかけることもまた、お茶の価値。
その静かなひとときには、忙しい日々のなかでこぼれ落ちてしまいがちな豊かさが宿っています。

INFORMATION

ocha room ashita ITOEN
東京都渋谷区渋谷2-24-12
渋谷スクランブルスクエア ショップ&レストラン 10階
03-6803-8112
https://www.itoen.jp/shopping/store/40931/