旅する人々の往来の場である空港。ここには搭乗前の時間にはターミナルで食事をしたり、お土産を買ったりする楽しみも待っています。

“東京の空の玄関口”羽田空港国際線ターミナルは自然光を活かした設計がなされ、「和」と「江戸」をイメージした日本情緒ただようフロアが2010年のオープン以降、話題を集めています。コロナ禍の影響で多くの人が渡航制限を余儀なくされている現在の国際線ターミナルを訪ねてみました。

2021年12月中旬、モノレールで国際線ターミナル駅に降り立った人はわずか3人。2つの国内線ターミナル駅に比べて降り立つ人が圧倒的に少ないことを実感する瞬間でした。

航空会社のチェックインカウンターがズラリと並ぶ3階出発ロビーへ。コロナ禍以前は搭乗する人々をひっきりなしに迎え入れていたこのフロアでは、スーツケースを引く人の姿もわずかで、使われている気配のないカウンターも半分以上。閑散とした印象を受けました。

■昔は江戸を、今は東京の空の玄関口を象徴する「はねだ日本橋」

天井が高く、広々とした出発ロビーを見下ろすように、ダイナックに架けられているのが「はねだ日本橋」です。総檜造りで全長約25m。ターミナルの4階から5階にかけて渡され、江戸時代に生きた人々が旅の起点とした日本橋の半分のサイズで復元されています。

江戸の象徴の1つでもある日本橋を空港の天部に架けるという斬新なアイデア!出発ロビーの様子も上から観察できるこの橋は格好の撮影スポットでスマホを取り出して写真を撮る国内外の人が後を絶ちません。世界と空で繋がる羽田の発着の象徴となった日本橋ですが、その脇を彩る陶板性の壁画「江戸図屏風」(国立歴史民俗博物館所蔵のレプリカ)にも注目。この作品には江戸っ子たちでにぎわう名所が描かれています。

空港内には「ソーシャルディスタンス」を呼びかける看板がいたるところに置かれている。

美しい曲線の意匠が施された日本橋を渡ると、和風の赤い傘とベンチが配された通路を通って「お祭り広場」へ。

この広場の壁の一画はあるモノで占められています。それは「HANEDA AIRLINES」の航空券をデザインした絵馬。日本語以外の文字で書かれたものも目立ちます。絵馬は自動販売機で購入した後は願いごとを記し、壁に掛けるシステム。もちろん、お土産として持ち帰る人も多くいます。

ところで、この広場にも、出発ロビーにも共通していえるのが、天井から射し込んでくる光がきもちのよいこと。このターミナルでは屋根に光の透過率の高い太陽光発電パネルを取り付け、自然光を活用しながら自家発電をしているそう。SDGsの意識を感じます。

5階フロアの外には開放的な展望デッキ。4つの滑走路が整備され、海外へと離発着する航空機を間近に見ることができることもあり、「撮り鉄」ならぬ「撮りヒコ」さんたちの姿もちらほら。ちなみにこのデッキは24時間開放されているので、昼と夜とでぐっと変わる雰囲気を楽しめます。(天候や保安上の理由により閉鎖する場合もあり)

■江戸を再現したメインストリート「江戸小路」
江戸小路では店名入りの提灯がお出迎え

「和」と「江戸」をテーマにした飲食店とショップがひしめくのが、メインストリートの「江戸小路」。無垢材を用い、手カンナなどで仕上げられた空間にはバラエティ豊かな食やお土産が楽しめるお店が集まっています。しかし現在、約半数のお店が閉まっている状態。暖簾がなく、メニューのサンプルが並ぶショーケースを覆うように布がかけられている様子を目のあたりにするとコロナ禍の現在を改めて思い知らされ、胸が締め付けられました。

そんななか、ひっきりなしにお客さんを集めていたのが城南地区にあるラーメンの名店「せたが屋」(世田谷区野沢)や十八代目 中村勘三郎が監修した江戸時代の芝居小屋をイメージしたお土産ショップ。旅立つ前の楽しみを見つけにやって来る人たちの姿はこの空間を元気にさせるようです。

日本橋を渡り、絵馬に願い事を書き、飛行機の離発着を眺める…。コロナ禍の影響を受け、渡航制限のある今、羽田の「江戸」を観光するのはいかがでしょうか。

Information

羽田空港国際線ターミナル

東京都大田区羽田空港2-6-5

https://tokyo-haneda.com/index.html