東京メトロ銀座線「外苑前」駅2b出口を出ると視界を占めるのは、グレーチングがダイナミックな格子模様を作るスタイリッシュなビル「エスコルテ青山」。
インテリアストア「MAARKET (マーケット)トーキョー」はこのビルの1階にあります。

ストアの母体は40年以上に渡り、ヨーロッパの高品質でデザイン性の高い家具の輸入販売を行う株式会社インターオフィス(1983年設立)。実は2020年から同社が運営するオンラインストア「MAARKET」の実店舗としての機能も持ち合わせています。

ミュージアムを思わせる広い店内には高品質で美的感性をくすぐるプロダクトがズラリ。「バルセロナチェア」や「チェスカチェア」が並ぶ台座の後ろでひときわ目を引くのがインターオフィスが創業当時から扱っているスイスのモジュラーファニチャー 「USMハラ―(ユーエスエム・ハラー)」 の渋いグリーン系のサイドボードやローボード、キャビネットなど。 こちらは限定色の「オリーブグリーン」で、日本ではMAARKETとUSMのショールームでしか購入できない希少なカラーだそう。

モジュールとステンレスの組み合わせがストロングな美しさを伝える「USMハラー」限定色のプロダクト

ブラックの壁は機能美を感じさせる壁面収納も備え、新旧の名作を揃えたチェアをはじめ、照明やグラス、小物の数々が並んでいます。
2段に渡って置かれたチェアは座ってみたいというお客さまがいらっしゃると、すぐに取り出すことができるうえ、位置も簡単に調節可能。

高さが異なる台座やすっきりとした壁面収納がプロダクトの存在感を引き立てる
センスと機能美を感じさせるチェアの展示コーナーには壁にこんな仕掛けが

美しさと機能を兼ね備えたMAARKETの店内設計は、インハウスのデザインチームである「Interoffice Design Studio(IDS)」が手がけました。
ヨーロッパの輸入家具を扱う一方、オフィスをはじめ、公共施設、美術館、図書館、学校、レジデンスなどのレイアウトからコーディネイト、特注家具の制作までを手がける部門を設けている同社ならではのセンスと技術の集積を感じます。

照明コーナーでひときわ目を引く、ユニークな形状の「ジェルバゾーニ ブラス96」

ちなみにインターオフィスには研修制度があり、前述したUSMやVitra(ヴィトラ)といった家具メーカーの本社見学をはじめ、「Milan Design Week(ミラノデザインウィーク)」「3daysofdesign
(スリーデイズオブデザイン)」「Orgatec(オルガテック)」など、世界的な展示会に足を運び、デザイン業界の動向や歴史、現場を知る機会を設けているそうです。

色、かたちが想像力をかきたてるステキなプロダクトがひしめき、足を踏み入れた途端からワクワクが止まらない店内にいると、自宅の家具やインテリアについても想いを巡らせてしまいます。

家具選びのコツについて、株式会社インターオフィス広報企画課のYさん(ご本人のご希望により、イニシャルで)は「カラーは気分を反映しますよね。家具を選ぶ時、まずは好みのカラーを大事にした方が良いと思います。今、流行っている色だからという選び方ではなく、やはりその人の気持ちを汲んだ色です。カラーを同じトーンで合わせることも重要かなと思います。もし、お部屋をグレイッシュなトーンで揃えるなら、最初にグレーで揃えてから差し色を1つ入れるとポイントになり、引き立つのではないでしょうか。

デザイナー粟辻美早さんが手がけたロゴが入ったトートバッグ。A3サイズも楽に入り、持ち手が太く、裏地も付いている

ニューノルディックを牽引するデンマークのブランド『Muuto(ムート)』は、2019年のMilan Design Weekでとても興味深い展示を行いました。お部屋をいくつか用意して、雰囲気が違うカラーで各部屋をコーディネイトし、ゲストに心拍数を測る装置を付けて入ってもらうというものです。すると、体験者は部屋によって心拍数が変わるそうです。心拍数がすごく上がったら緊張している、落ち着いていたらリラックスしている…。人間の感情は空間から影響を受けていることがわかりますね」。

MAARKET トーキョーには前述のカラーに関して面白い実験を行ったMuutoのストアも併設。こちらはコペンハーゲン、パリ、ストックホルム、台北に次ぐ世界で 5 番目のフラッグシップストアで、家具をはじめ、ラグや照明、アクセサリーの数々が展示・販売されています。

壁面にオシャレ感を演出する木製のコートフック。色や大小の組み合わせが楽しめる

2006 年にコペンハーゲンで設立されたMuutoは当初、ほぼスカンジナビア出身のデザイナーが活躍していたものの、最近では、オランダやオーストラリアのデザイナーもMuutoのデザインフィロソフィーに共感し参画するなど、デザイナーの裾野が広がり、今や「ニューノルディックデザイン」を牽引するブランドとして、北欧デザインに新風を吹き込んでいます。革新的なデザインと持続可能な価値観を持ち合わせ、国際的に注目を集めています。

リビング、ダイニングといった生活のシーンに合わせて展示されているMuutoのプロダクトの数々はトーンをおさえた、やわらかなカラーが印象的。気持ちを和らげるデザインが揃っています。

「北欧はとくに照明に対する想いが深く、デザインへの造詣が深いですね。Muutoの『ストランドペンダントライト』のシェードは和紙のようにも思えますが、樹脂を吹きかけて作られています。ちょうどいい透け感があり、ライトがほどよく拡散するので心が落ち着きますよね。クラフトマンシップをベースに先進的な技術を取り入れているのがMuutoの持ち味といえます」と、Yさん。

素材と意匠が和室にも合うMuutoの「ストランドペンダントランプ」

こちらはクッションやバスケット、テキスタイルが並ぶコーナーの反対側に置かれている「Muutoボード」。

Muutoを開店するにあたり、デンマークから送られてきたボードを彩るモノたち

ガラスケースに展示されているのは木の葉や石、紐、大小の布などで、これらはデザイナーのインスピレーションの源だったり、プロダクトのイメージを伝えるものです。

子どもがどこかから探してきた大切な宝もののようなアレコレ……。Muutoというブランドを知る一翼になることでしょう。

ところで、世界はコロナ禍を経験し、働き方もずいぶん変わりました。
会社に勤める人でも自宅で仕事をする日もあり、必然的にこれまでよりも長時間を過ごす部屋に関心を持つ人も多くなったのではないでしょうか。

「残念なことにオフィスの面積を縮小される企業も多かったのですが、オンラインのミーティングに特化したオフィススペースを取り入れる企業が増えました。アコースティックパネルやフォーンブース、音の問題を解決してくれるような家具などの需要が増えましたね。

併せて、ご自宅でも快適に働きたいというニーズも増え、座り心地のいいタスクチェアやコンパクトでリビングの端にもおけるサイズのデスクがほしい、という声もたくさんいただきました」。

実はコロナ禍でインターオフィスでもフレキシブルな働き方が推奨され、1人で集中したい時や急なオンラインミーティングに対応できるよう、オフィスのレイアウトを変更。また、コロナ禍とは関係なく、週に1度、社員が分担制でオフィスの清掃も行っているそうです。
「お掃除をする時、同じ役目をもつ製品でも素材によって扱い方が異なります。この素材だったら拭くのではなく、やさしくはたくだけとか。お客さまにメンテナンスについて相談された時、自分たちの実体験が役立つこともありますね」。

青山通りに面したテラスにはトーマス・ヘザウィックが手がけた回転イス「スパン」が。クルクル回ると腹筋が鍛えられそう

家具を永く使い続けるにはメンテナンスがとても大切です。その方法について気になる方も多くいらっしゃることでしょう。

さまざまなマテリアルで作られた多様なプロダクトを扱うインターオフィスではMAARKETの店頭でスタッフに相談することも可能だし、オンラインで取り扱いプロダクトのお手入れ方法を紹介するメンテナンスマニュアルにもアクセス可能です。

なお、オフィス空間から教育施設、個人邸宅などのインテリアデザインを手がけるインターオフィスでは、理想のライフスタイルに合った家具のご提案もしています。

実際にコーディネートされた家具を一式購入することもできるし、さまざまな家具を試したい、年に1度は模様替えをしたい、新調した家具が届くまで利用したいという方にはお手頃な価格でサブスクを利用することも可能です。

本マガジンを運営するアイネストの物件には「カール・ハンセン&サン」のソファとサイドテーブルをセレクト

Muutoストアの隣には東京・蔵前で生まれた自家焙煎珈琲屋「SOL’ S COFFEE GAIEN(ソルズコーヒーガイエン)」が。

平日は午前8時から営業する、白を基調にした清潔感あふれるコーヒースタンドではコーヒーや旬のフルーツを使ったシロップを用いたドリンクなどがいただけます。また、ベルギーのアウトドア家具メーカー「extremis(エクストレミス)」のテーブル・チェアが屋内外に配されている点もMAARKETトーキョーにあるコーヒースタンドらしく、楽しめます。

五感を刺激したいという思いから併設されたコーヒースタンド「SOL’ S COFFEE GAIEN」
information

MAARKET トーキョー
東京都港区北青山2-7-15
03-5432-9446
https://maarket.jp