日本列島でパンケーキブームが巻き起こったのは2010年頃。
それまでバターとメープルシロップ(あるいはハチミツ)といただく、喫茶店のお馴染みメニュー「ホットケーキ」が「パンケーキ」として、じわりじわりと浸透していきました。
専門店では開店前から行列を作り、パンケーキをちゃっかりとラインアップに加えるカフェも続出…。流行もの好きの日本人ゆえ一過性のブーム?と思いきや、今やスイーツの「定番」の座に涼しい顔をして座っているのがパンケーキといえるでしょう。
日本のパンケーキブームに火を付けた、リコッタチーズが入ったスフレタイプのパンケーキを提供する「bills(ビルズ)」や生クリームをタワー状にトッピングしたフルーツたっぷりのパンケーキで知られる「Eggs ‘n Things(エッグスンシングス)」はオープンから10年以上たった今も人気だし、ホットケーキという昭和の頃から連綿と続いた喫茶店メニューが下地にあったおかげかパンケーキはすんなり軽やかに日本人の食に溶け込んだ印象です。
今回訪れた「Clinton Street Baking Co. & Restaurant(クリントン・ストリート・ベイキング・カンパニー」は日本のパンケーキブームがやや落ち着きかけた2013年に港区南青山の骨董通りにオープン。
ニューヨークで「キング・オブ・ブランチ」といわれた同店はアメリカ合衆国で1987年から2016年まで発行されていた『The New York Observer』で最高評価を受けた人気店。なかでも「ブルーベリー・パンケーキ」はニューヨークマガジン誌で2度も「ベスト・パンケーキ」に輝いています。
赤と白を基調としたお店は入り口近くの「車両侵入禁止」の標識とも一体化。
これは標識に合わせた遊び心なのか、全くの偶然? キリッとした赤色はパリのビストロ風ではありますが、扉の向こうに何か楽しいことが待ち受けているよ…と手招きしているようです。
壁一面を占める黒板にメニューが書かれた1階はテーブル席が並び、骨董通りの往来が臨めるガラス窓から自然光がたっぷりと降り注がれます。この日は平日のランチタイムでしたが、テーブルは満席。そのほとんどが女性客で、どのテーブルにもパンケーキが並んでいました。
ニューヨーカーをトリコにした「ブルーベリー・パンケーキ」(1,540円)がこちら。
3枚に重ねられ、ツヤやかな大粒のブルーベリーがふんだんに使われたソースがたっぷりかけられています。しかも3枚のパンケーキの間にもしっかりと。
パンケーキの生地はふわふわっのスフレタイプと思いきや、意外にも重量感が前に出ます。ほどよく厚みがあり、パンケーキの間に挟んだブルーベリーソースが冷めても水っぽくならず、生地の味わいを維持できている点にベイキングの技術を感じます。
甘酸っぱいブルーベリーソースと口当たりのよいしっとりとした食感を楽しんだ後は自家製のメープルバターをかけて「味変」もOK。ブルーベリーの甘酸っぱさにメープルバターが加わることで、まろやかな味わいに仕上がります。最後の一片が胃袋にすべり落ちた後は、心は至福の一途をたどるのみ。
ところで、このお店はニューヨークの「ナンバーワン・ブレックファスト」のお店としても人気を博しています。
エッグベネディクトもお店の朝食メニューにラインアップされ、今回は「スモークサーモン・ベネディクト」(1,980円)をオーダー。
スモークサーモンの上にオランデーズソース(バターとレモン果汁、卵黄、塩、黒コショウを使ったソース)がかけられたポーチドエッグがのせられた量感のある一皿。トロトロの黄身とオランデーズソースが作り出すコクとスモークサーモンをポテトを練り込んだ塩気のあるバターミルクビスケットが受け止めます。
人を笑顔にさせるパンケーキもエッグベネディクトも「和願施(わがんせ)」という言葉を想起させます。
和願施とは周囲に笑顔を見せることが徳(幸福)になる、という考え方。美味しいものをいただくと口角が上がり、笑顔になるので、幸福への近道といえるかもしれません。誰か元気づけたい人がいれば、ぜひ美味しいものを一緒に!
なお、嬉しいことにお店ではモーニングも実施中。
ミニサイズのパンケーキとエッグベネディクト1つ+ドリンクがセットになっています。もし女性2人でランチタイムに訪れるなら、パンケーキとエッグベネディクトをそれぞれ1品ずつオーダーし、シェアするのもよいでしょう。
information
クリントン・ストリート・ベイキング・カンパニー
東京都港区南青山5-17-1YHT南青山
03-6450-5944
https://clintonstreetbaking.co.jp