京王井の頭線「駒場東大前」駅の東口側にある正門をくぐり、すぐに左へ。しばらく歩くと見えてくるのが、森の木立のなかに佇むベージュの外壁が美しい年季を刻んだ建物。ブラッスリー「ルヴェ ソン ヴェール駒場」です。

この建物は「ファカルティハウス」(旧一高同窓会館洋館)といい、1937年に建造されました。設計は「内田ゴシック」と呼ばれ、駒場、本郷キャンパス内の多くの建物を手がけた内田祥三、そして清水幸重。長く同窓会館として使われていましたが、2004年3月に改築(一部新築)されました。井の頭線で渋谷駅まで2駅という立地にありながら都会の喧騒はなく、森の中にやって来たかのような静けさに包まれています。

「ルヴェソンヴェール駒場」エントランスの風格ある扉

蔓植物がデザインされた美しく、重厚感のある扉を開けると、大きな窓から自然光がたっぷり降り注ぐ明るい店内が広がっています。レトロとカジュアルが同居する居心地のよい空間。テーブルの配置も余裕があり、ここが大学のキャンパスであることを忘れてしまいそうになります。また、窓の向こうにはテラスが配され、初夏はここで通り抜ける爽やかな風とともにランチを楽しむ絶好の場。

コロナ禍の影響を受け、長くお休みを余儀なくされていたルヴェ ソン ヴェール駒場ですが、3度目の緊急事態宣言が開けた後にランチのみ再開されました。この時を待っていた人が多くいたのでしょう、お昼時のピークをすぎた時間帯にもかかわらず、お客様が途切れることはありませんでした。

さて、お店のランチは2種。サラダビュッフェ付きの日替わりランチ、そして前菜とメインが選べるコースです。

日替わりランチには「TFT(Table For Two )」を選べるメニューも用意されています。これはTFTメニューをオーダーすることでアフリカの子ども1人に1食分の給食を届けるというシステム。SDGsへの貢献を感じます。

お店の名物ともいえるサラダビュッフェは10数種の野菜、パングラタンや煮込み料理などが並び、ドレッシングも3種用意されています。日頃、野菜不足を自覚している人にはおすすめ。

日替わりランチ(1,100円)はメインディッシュを肉、魚、TFTから選べる。写真は魚の「サゴシのグリエ リンゴのケッカソース」。

この日の日替わりランチのメインディッシュに選んだのは魚料理「サゴシのグリエ リンゴのケッカソース」。

ケッカソースとはイタリア生まれの冷製トマトソースのことで「ブルスケッタ」の上にのっているトマトのソースといえばわかりやすいかもしれません。リンゴが使われているだけに甘酸っぱいソースがグリルされたサゴシに絡まり、旨みを引き立てていました。

ランチコース(2,420円)はオードブルとメインディッシュを1品ずつ選べ、デザートも付く。

コースメニューも前菜に「パテ・グランメール」が選べたり、メインに「大山鶏むね肉 キエフ風」やフランス人が好む「ステーキフリット(ステーキ+ポテトフライ)」などが用意されていたりと、フランス料理でもとりわけ気軽なブラッスリーやビストロの料理を好む人にはたまらないラインアップ。そのうえ、お値段もリーズナブル。

コースのデザートが届く頃はいい感じにおなかも満たされ、「お昼からもがんばろう」という気持ちに。もしかしたら食事中、外から室内に伸びる自然光を浴びることで自律神経がととのえられ、知らず知らずのうちにバイタリティのスイッチが入るのかもしれません。

四季折々の表情を楽しめるテラス席。

お店を後にしたら、内田ゴシックの風格ある建物が建ち並ぶ、駒場キャンパスを散策するのもよいでしょう。自然豊かな広大な校内はスケッチの名所でもあります。

1人で食べる「昼食」は、仲間と同じテーブルを囲んだとたんに「ご馳走」に変わるような気がします。2022年、こんな場面がたくさん体験できることを願っています。

information

ルヴェ ソン ヴェール駒場

東京都目黒区駒場3-8-1

東京大学駒場ファカルティーハウス1F

03-5790-5931

https://leversonverre-tokyo.com/restaurant/komaba.html