三軒茶屋の「西友」裏手から茶沢通りへと抜ける通りには、個性豊かな飲食店が軒を連ね、ランチにディナーに、絶えず賑わいの声が満ちています。
その喧騒から、ほんの一歩。脇道へ足を踏み入れた瞬間、まるで扉の向こうに入り込んだかのように街の音がふっと遠のきます。

「titoten(チトテン)」は、そんな路地にひっそりと間口を構えるお店です。
一見すると、夜から灯りがともるバーのような佇まい。ですが、自然光の射し込む時間帯に楽しめるのは、趣向の凝らされたとっておきのモーニングとブランチ。知る人ぞ知る隠れ家のような存在感に、ドアを開ける前から胸が高鳴ります。

さりげない店構えの「titoten」。夜のバーのような佇まいだが、日中はモーニング&ブランチの舞台に

店内はカウンター9席のみの、こぢんまりとした空間。
窓から静かに差し込む自然光の筋と店内をやわらかく照らす照明がグラデーションを描き、まるで誰にも知られていない小さな祈りの部屋に迷い込んだかのような雰囲気を醸し出しています。静けさの中に漂う心地よい緊張感。日常の忙しさをふっと忘れさせてくれるようです。

カウンター9席だけの空間。ケータリングの作業場として使われていたことも

チェアに腰掛け、まず心を奪われるのが、メニューの愛らしさ。手渡された1冊の文庫本を開くと、そのページの間にお品書きがそっと挟み込まれています。まるでアメリカの禁酒法時代に存在した秘密の社交場「speak easy」で極秘メニューをのぞくような遊び心。本をめくる時のワクワク感から特別な体験が始まります。

文庫本を開くと、そっと挟まれたお品書き。まるで秘密の合言葉を手渡されるような、心はずむ瞬間!

今回いただいたのは、「プレート」(1,815円)と「オープンサンドウィッチ」(1,540円)
「プレート」には彩り豊かな野菜、自家製ハム、絶妙な茹で加減の卵などが美しく盛り付けられ、目を楽しませてくれます。お皿にひしめくお惣菜は一品一品が丁寧に作られ、素材の旨味が引き立つやさしい味わい。

彩り豊かな野菜と自家製ハム、絶妙な茹で加減の卵。一皿にひしめく惣菜から細やかな仕事が伝わる

見逃せないのは、柑橘系やべリー系のフルーツ、玉ねぎ、焦がしキャラメルなどを使った4種の自家製ジャム。パンは清澄白河のベーカリー「CIEST(チェスト)」から取り寄せたもので、小麦の香ばしさと奥深い風味が際立ちます。噛みしめるほどに味わい深いそのパンに、個性豊かなジャムを少しずつのせて味わう時間は、まさに至福のひとときです。

4種のジャムのなかで異彩を放っていたのが「玉ねぎのジャム」(写真手前右)。甘さの中にほのかな滋味が広がる

もう1品の「オープンサンドウィッチ」は、チャイ風味のフレンチトースト(季節によって内容変更)。
運ばれてきた瞬間から、スパイスの甘くエキゾチックな香りがふわりと鼻先をくすぐります。ほどよい甘さに抑えられたフレンチトーストは、添えられたマスカルポーネクリームのまろやかなコクと相性抜群。

瑞々しいスモモや桃が添えられている点にも、心がときめきます。
爽やかな甘酸っぱさと愛らしい彩りが、一皿を可憐に引き締め、スパイスの余韻と果実のフレッシュさが口の中で溶け合うたび、新しい美味しさに出会えます。

ほのかなスパイスの香りとマスカルポーネのコク。スモモと桃が愛らしい彩りを添える

料理を引き立てるドリンクも、自家製シロップ(770円)を使ったものもラインアップ。爽快な刺激を届ける生姜とスパイス、甘味と酸味が心地よい季節限定の梅と紫蘇など。体にじんわりと染み渡り、自然の持ち味を再確認しました。

自家製シロップのほか、珈琲や「TYNK」のオーガニックティーなど、丁寧に淹れられるドリンクメニューも

お店では8時からいただける朝食やブランチだけでなく、軽い一皿とお酒を楽しむ「アペロ」の時間も用意されています。フランスで根づいたこの習慣は1日の中に句読点を振り、気持ちを切り替えるための時間。お店では13時もしくは15時からアペロをスタート。仕事や用事に追われた昼下がり、少しだけグラスを傾け、美味しいものとともに思い思いのひとときを過ごす―そうして肩の力をふっと抜くひとときも、また乙なものです。

infomation

titoten
東京都世田谷区太子堂4-25-5
03-6805-5830
https://www.instagram.com/tito.ten