2月はチョコレートの季節。
バレンタインデーのチョコレートは年々新しい顔ぶれが登場するし、百貨店やスイーツショップで繰り広げられる熱気あふれるキャンペーンもこの季節ならではのお楽しみ。すでに日本の風物詩といえます。

日本のバレンタインデーは女性が好きな男性にチョコレートを渡すのがお決まりですが、最近では女性が親しい友人や自分へのギフトとして選ぶことも増えているそうです。

その背景には「Bean to Bar(ビーントゥバー、カカオ豆からチョコレートバーになるまで一貫して作ること)」を掲げるクラフト系チョコレートを製造・販売する国内の会社が増え、個性ある商品が続々と登場していることが考えられます。

都内で展開する「Minimal(ミニマル)」もBean to Barを代表する1社。
世界中のカカオ農園に足を運び、仕入れたカカオ豆を用いて作るオリジナリティあふれる商品はクラフト系チョコレートの先がけといわれ、人気を集めています。

細い路地の中に佇むお店は、まるで美味しいチョコレートをひっそりと味わえる隠れ家のよう

都内には数店舗ありますが「Minimal The Baking 代々木上原」はガトーショコラの食べ比べやコーヒーとのペアリングを楽しめるお店。ガトーショコラに合うコーヒーをお店のバリスタに選んでいただける、素敵な食の体験が待っています。

代々木上原駅南口から坂道を上り、ドーナツが人気を博すカフェ「ハリッツ」のある細い路地へ。白と木肌を基調としたアートギャラリー風のお店は空間をキュッと引き締めた静謐さが漂い、イートインコーナーも8席のみと店名を思わせるミニマルな作りを感じます。

カウンターが4席と2人掛けのテーブルが2つあり、ひとりでも入りやすい

名物は「ガトーショコラの食べ比べセット」(ドリンク付きで1,450円)。
直感と好奇心で選んだガトーショコラはこちらです。

このセットでは、8種類の中から3種類を選べる。それぞれ食感や味が違うので、お店の人にどんな味かを聞きながら選ぶのも楽しみのひとつ

右から「フルーティー」、「シーズナル(「いちご家めい」との季節限定コラボ商品)、「チョコレートレアチーズケーキ」。約2cmにスライスされ、木のトレーにのって提供されます。

ザクザクとチョコレート感を味わいたいならタンザニア産カカオを使った「フルーティー」を。選んだ3つのなかで一番甘みがソフトで、しっとりと濃厚な生地は辛口の赤ワインとの相性も良さそう。

柔らかいのかと思いきや、案外しっかりとした食感の「フルーティー」。「ガトーショコラ ベイクド」という系統だそう

「シーズナル」は香川県のいちご農家「いちご家めい」が生産する希少な品種「女峰」とコクのあるカスタードクリームを組み合わせた、三位一体の贅沢なガトーショコラ。酸味と甘みのバランスがよく、バレンタインギフトに人気だそうです。

「ガトーショコラ ソフト」という系統に属する「シーズナル」。しっとりした食感と甘酸っぱさがたまらない

今回いただいたなかで、女子2人の心を射止めたのは「チョコレートレアチーズケーキ」。チョコレートとチーズケーキの長所(美味しいとこどり)を最大限に生かした、なめらかな食感に瞑目してしまう逸品。底に敷かれたサクサクのクッキーも生地の魅力をおおいに引き出しています。

変わり種の系統「レアチーズケーキ」の1種、「チョコレートレアチーズケーキ」。他の2種とは違ってチョコレートの風味はあっさりだが、コーヒーによく合う

ドリンクはいちご家めいのいちごを使ったガトーショコラに合わせて、富山の「ハゼルコーヒー」のコロンビア産の豆を使ったコーヒーをペアリング。「いちごの酸味と相性の良いレーズンを思わせる風味が広がりますよ」とお店の方。

もう1品紹介しましょう。
「ガトーショコラとコーヒーの香るチョコレートパフェ」(ドリンクとセットで1,750円)。
ガーナ産カカオを用いたガトーショコラ「ハイカカオ」がトッピングされています。

グラスのなかには、底からパフェソース、「オニバス」のケニア産コーヒー豆を使ったゼリー、コーヒーの香りを移した白色のソルベ、チョコレートがけした自家製グラノーラ、ナッツ感のあるナッティアイスクリーム、そしてガトーショコラ「ハイカカオ」。お店の方によるとグラスの中身を全部混ぜ合わせることでチョコレートの味わいが楽しめるそうです。

混ぜるとチョコやコーヒーの様々な香りが組み合わさり、複雑な味わいとなるチョコレートパフェ。冷たいアイスと一緒に飲む温かいコーヒーの組み合わせも魅力的

渾身のチョコレート愛が注がれたパフェにはコーヒーゼリーにも用いられている「オニバス」のコーヒーをペアリング。これはビターな風味のガトーショコラ「ハイカカオ」に合わせたもので、前述のハゼルコーヒーに比べると酸味が強く、全体的にストロングな風味。

マグカップでたっぷり提供されるハゼルコーヒー(左)とオニバスコーヒー(右)。酸味などの風味が全く違うので、飲み比べるのも面白いかも?

Minimalが世に送り出すガトーショコラとチョコレートパフェ。
胃に落ちる前も後も多幸感を感じさせてくれました。

チョコレートは数あるお菓子のなかでも“特別枠”に思えます。
それはきっと果てしなく長い歴史を経て現代に息づいているからなのでしょう。

店内にはテイクアウト用の品が並ぶショーケースもあり、家でもチョコレートを贅沢に味わえる

その誕生の舞台は古代メキシコ。
空気の神、ケツァルコアトルがそれまで神々にしか許されていなかったカカオとトウモロコシをアステカ人に授けたことからチョコレートの歴史が始まったという伝説があります。

やがてカカオは食べもののほか、貨幣の役割も果たすようになります。
カカオ豆4粒でカボチャ1つ、100粒もあれば奴隷と交換できたほか、金や琥珀のように貢ぎ物にも使われていたとか。

スウェーデンの植物学者カール・フォン・リンネはこの貴重なカカオに対し「テオブローマ・カカオ(theobroma cacao)という学名を与えています。これは「神々の食べもの」という意味。

今回特別に試食で頂いたお持ち帰り用のチョコレート。口に入れると舌の上でやわらかくとろけ、濃厚な香りが広がる

多くの果実は木の枝に成りますが、カカオは木の幹に直接ラグビーボール大の実をつけるという不思議な果樹。幹生花(かんせいか)といい、ドリアンやジャックフルーツなどもこの仲間です。選ばれし神々のフルーツなのでしょうか。

はるか昔から珍重されてきたカカオの進化系といえるチョコレート。
ちなみにカカオには「恋愛ホルモン」と呼ばれる「フェニルエチアミン」も含まれています。口に入れると恋のトキメキも味わえるかも⁉︎

INFORMATION

Minimal The Baking 代々木上原
東京都渋谷区上原1-34-5
03-6407-8292
https://mini-mal.tokyo/pages/shop_yoyogiuehara