旗の台は、東急池上線と大井町線が交わる、どこか懐かしい雰囲気の駅。昭和医科大学病院の最寄り駅としても知られています。
駅周辺には、昭和の風情をまとった純喫茶から気軽に入れるカフェまで、多彩なお店が点在しています。なかにはレコードを持ち込み、レコードプレイヤーとイヤフォンで聴かせてくれる、ユニークなカフェもあるほど。決して喫茶店に事欠く街ではありません。
それでも今回訪れた「Chilling Coffee&Bake」には、駅からすぐの立地にもかかわらず、どこか「隠れ家」とか「穴場」という感覚を覚えました。理由は単純で、駅に連なる商店街の通り沿いではなく、池上線と大井町線がクロスする線路脇の細い道にひっそりとお店を構えているからです。


扉を開けると、まず目に飛び込んでくるのは深みのあるジェイドグリーンのシックなタイルで覆われたキッチンカウンターで、この一角が店内の主役といいたくなる、堂々とした存在感。
それでいてどこか肩の力が抜けるような親しみやすさも漂っていて、思わずカウンター越しにお店の方に話しかけたくなるような距離の近さを感じさせてくれます。

このカウンターを中心に、店内はヴィンテージ感あふれる照明や小物が並び、まるでヨーロッパの小さなカフェに迷い込んだようなムードがたなびいています。窓越しには線路脇に生い茂る雑草の緑が見え、その向こうに池上線の電車が走る…。日常のあれこれから離れる時間が生まれるかたわら、どことなく郷愁を誘う風景が広がっています。座席は5人も入ればいっぱい、というこぢんまりとした空間ですが、次々とお客さんが訪れます。

桃の名残の頃、いただいたのは、こちらの「桃のスープと杏仁」(ドリンク付き、1,920円)。桃が出回るわずかな時期に登場する、特別なデザートです。

運ばれてきた瞬間、目を奪われたのはその愛らしい見た目。
桃にヨーグルトや牛乳、蜂蜜などを合わせたとろみのあるミルキーなスープに、なめらかな杏仁豆腐、そして桃のコンポートが添えられています。コンポートはそのまま食べても、スープと絡めて食べてもそれぞれに美味。パリッとした食感のクランブルも桃と杏仁豆腐をいただく合間の良きアクセントになっています。
桃のコンポートソーダはローズマリーの香りが立ちのぼり、見た目のグラデーションも美しい1杯。夏の終わりにぴったりの、涼やかな組み合わせでした。

看板商品の「キャロットケーキ」(650円)は、たっぷりのスパイスとナッツが効いた、食べ応えのある1皿。酸味のあるクリームチーズフロスティングがよく合い、甘さもほどよく、最後まで重たくありません。「カフェ・オ・レ」(550円)は、大きめのカップになみなみと注がれていて、思わず嬉しくなるボリューム。コーヒーの香りがしっかりと感じられ、ケーキとの相性も申し分ありません。


カウンターの脇に置かれたショーケースには、自家製の焼き菓子がずらりと並びます。
今日はどれを食べようか?とコーヒーに合わせて気になる1枚を選べる、その気軽さこそ“街のカフェ”。次の予定までの合間にサクッと甘いものとともにお茶をする、そんな気分転換ができそうです。

ふらっと立ち寄っても、つい長居したくなる居心地の良さの秘密は、きっとこのお店の価格設定にもあるように思います。焼き菓子やケーキ、ドリンクも、決して高くはない価格でありながら、しっかりとおいしい。この安心感が、リピーターを引き寄せているのではないでしょうか。

お店を営むのは、パティシエとバリスタ、ふたりの兄弟。お兄さんはスイーツや焼き菓子を、弟さんはバリスタとしてコーヒーを担当しているのだそう。役割の違うふたりが力を合わせているからこそ、スイーツとドリンクのどちらにも手を抜かない、バランスの取れたメニューが生まれているのかもしれません。
「旗の台で居心地のよいカフェをどこか知ってる?」と聞かれたら、迷わずこの店の名前を挙げたくなる…線路脇にひっそりと佇むカフェはそんな求心力を持っています。
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Chilling Coffee&Bake
東京都品川区旗の台YGフラッグ1F
https://www.instagram.com/chilling_coffeeandbake/