中目黒と池尻大橋の間を走る山手通り。
「ドン・キホーテ」のきらびやかな看板と隈研吾設計の「スターバックス リザーブ ロースタリー東京」がシンボリックに佇む通りに今、話題のタコスレストランがあります。

山手通り沿い。黒い外壁に「B」のサインが目印のブルーエントランスキッチン中目黒店

その名は「BLUE ENTRANCE KITCHEN(ブルーエントランスキッチン)中目黒店」。
交通量の多い通りの雑踏を背に螺旋階段を降りていくと、目の前に広がるのは無機質なコンクリートと格子状の天井に包まれた、どこか秘密めいている地下空間。

しかし、その静かな質感を軽やかに突き破るのが、店内に満ちるエネルギーです。
奥まった壁に描かれた女性の顔のアートがアクセントとなる空間では、音楽のリズム、テーブル席のざわめき、そして勢いよく肉を焼く音が立ち上り、熱気が空気を震わせます。

螺旋階段を降りる前には想像もつかなかった、エキサイティングな空気が渦巻く店内。
「地下に降りていく」という行為自体が、この店ではすでにひとつの“旅”の始まりなのだと、思わずにいられません。

お店の主役はもちろんタコス。
しかし、それは一般的なメキシコ料理の文脈にとどまりません。
「世界をタコスで表現」といわんばかりに、英国やアフリカ、イタリアなどのエッセンスを感じさせる、まさに“多国籍のピース“がラインアップ。しかもずっしりと、両手で支えなければ口に運べないほどのダイナミズムをたたえているのが、このお店の信条。

個性爆発のタコスとカラフルなドリンクが”映え”と食欲中枢を満たす!色々なタコスを試すなら、ポテトフライ付きのコンボメニューがおすすめ

そのスタイルの起点は意外にも、沖縄にあります。
沖縄といえば、かつてアメリカ統治下で生まれたタコス文化が息づく地(ちなみにタコライスは沖縄で生まれた料理)。

沖縄・恩納村に誕生したBLUE ENTRANCE KITCHENでは手で感じながら味わう、力強くも遊び心あふれるタコスを提供し、今や中目黒や横須賀、大阪にも出店するまでに。

テーブルからモバイルオーダー後、目の前に並んだのは、個性がせめぎ合う5種のタコス。
まずは2種のタコスが選べる「BEK タコス TOP2ピースコンボ」(2,200円)。
チョイスしたのは、英国のフィッシュ&チップスを思わせる「ザクザクフィッシュ(イングランド)」、そしてスパイスの香りが食欲をそそる「サウスアフリカン(アフリカ)」。

「ザクザクフィッシュ」(右)、「サウスアフリカン」(左)。メニューは全てモバイルオーダー。カーリーフライのトッピングやディップを追加で頼んだりすることも可能

人気の「BEK タコス TOP3ピースコンボ」(3,000円)には、香ばしい海老の旨みが弾ける「ガーリックシュリンプ」、アボカドのまろやかさと酸味が絶妙な「サワークリームアボカドシュリンプ(イタリア)」、そして肉とチーズのコクが一体となった「BEKグリルチーズ&ビーフタコス」の3種をチョイス。

右から「サワークリームアボカドシュリンプ」「BEKグリルチーズ&ビーフタコス」「ガーリックシュリンプ」

5種のタコスと山盛りのカーリーフライ(ポテト)のプレートが運ばれてきた瞬間、その迫力に思わず「ほぅ」と息が漏れ、しばし見惚れてしまいます。言い換えれば、このお店のタコスは“目で食べる“もの。あちこちから「デカッ!」という声が聞こえます。そして目にしっかりと焼き付けた後は…もう“挑む”しかありません!

ピクルスやトマトの載ったボリューム満点の「カーリーフライ」(チーズカーリーサルサ)。スパイシーな刺激が欲しいなら、迷わずトッピングを追加しよう!

実際に味わってみると、1つ1つのタコスが物語を紡ぎます。
たとえば、アフリカをテーマにした「サウスアフリカン」は、グリルチキンの大ぶりな一枚に、香ばしいチーズがとろり。そこへハニーとマスタードの甘みと酸味が絡み合い、塩気とのバランスが見事です。ひと口頬張れば、まだ見ぬアフリカの大地をイメージさせる力強さが広がります。

チーズソースが今にもあふれ出しそう!圧倒的な存在感とチーズのコクがクセになる「サウスアフリカン」

「サワークリームアボカドシュリンプ(イタリア)」はサクッと香ばしいフライドシュリンプの上にクリーミーなアボカドがはみ出さんばかりにのっかり、仕上げにサワークリームがかけられています。見た目のインパクトもさることながら、食べた瞬間に広がる渾然一体の美味しさが広がる、イタリアをフィーチャーしたタコス。エビにもアボカドにも目がないという方にぜひ、味わっていただきたい一品です。

どっしりとした重みのある「サワークリームアボカドシュリンプ」。どのタコスも1つで満足できるボリューム。2〜3ピースも食べればお腹も心もいっぱいになる

そんなタコスにぴったり寄り添うドリンクがいちごの果肉が入った「ストロベリースパーク」。スパイスと熱気に包まれた舌をリセットするかのように、炭酸のきめ細かい泡が口の中を軽やかに洗い流してくれます。

右から「ライムスパーク」「ストロベリースパーク」「レモンスパーク」。コンボメニューを注文したら、+400円でこちらのドリンクを選べる

お店のタコスにはビニール手袋が相棒。
油やソースが直接手につかないための配慮ですが、フォークやナイフを使わず、“手で食べる”行為はタコスとの距離をグッと近づけてくれるはず。具材の温度や重さを感じながら食べるという行為は、ヒトが原始時代の食の感覚に少しだけ立ち返る瞬間。

まわりを見渡せば、誰もが両手あるいは片手でタコスを豪快にかぶりつき(もはやビニール手袋を外している人も!)、皆が頬張るたびに具材やスパイスの熱気が立ちのぼっていくよう。ひと口ごとに笑い声が弾け、またひと口。店内に満ちる活気の源を目にすると幸せな気分になります。

見た目もお味もグラマラスなタコスを楽しむ時間は60分。
油でテロテロした手袋を外す瞬間、汗をかいた重たい武具を脱ぎ捨てた時のような軽やかさを感じ、達成感と解放感に包まれます。

螺旋階段を上がり、地上に出るとそこはいつもの山手通りで、道の向こうに見えるのは外壁工事中の「スターバックス リザーブ ロースタリー東京」。
アレ、なんだかさっきより色を帯び、鮮やかに立ち上がって見えるぞ!

タコスを通じて味わったのは世界の味と文化のかけら。
手や舌のほか、あらゆる感覚を総動員して味わい尽くすと心のレンズが磨かれ、解像度が少し上がるのかも。そんなタコス体験、いかがでしょう。

INFORMATION

BLUE ENTRANCE KITCHEN中目黒店
東京都目黒区東山2-3-5 ビラアペックスタワーB1F
https://www.instagram.com/blueentrancekitchen/?hl=ja