『英国一家、日本をおかわり』(マイケル・ブース著)の「メロン」の章をめくると、こんな文が目に飛び込んできます。

“「(前略)北海道メロンはフルーツ界の神戸牛とも呼ばれて、かの有名な神戸牛と同じくらい手間をかけて育てられ、日本人が執着する珍しい食べ物のなかでも特に珍しい。(中略)日本人の心を惹くこの高価な緑の玉の謎めいた魅力に、僕は長年関心を抱いていた。ごく普通に見えるメロンの、何がそんなに特別なのか? 僕が住む街なら、2ポンドも払えばスーパーでいくらでも買えるのに。(後略)」”

マイケル・ブース氏のいう「北海道メロン」とは、むかわ町穂別地区で栽培されている赤肉メロンの一種「I.Kメロン」のこと。夕張メロンを凌ぐメロンを目指して開発された品種です。高価なメロンを栽培する背後にあるのは日本人の贈答文化。とくにメロンの収穫時期はお中元の季節に重なることもあり、重宝される存在です。

そんな贈答品の主力選手であるフルーツは時に「お箱」というオシャレ着をまとって贈られたりもするのですが、普段から人の食生活にはなくてはならない存在。八百屋の軒先でその年お初の顔が並ぶと季節の訪れを伝えてくれるし、陽光をたっぷり浴びて育った熟れたフルーツの果汁と果肉は口を潤してくれるうえ、心の安息にもはたらきかけてくれます。

最近では「フルーツサンド」がブームで城南地区のあちこちで専門店を見かけるようになりました。2020年10月にオープンした「ダカフェ 恵比寿店」は、“八百屋の作る本気のフルーツサンド”を世に送り出す愛知県岡崎市の人気青果店「ダイワスーパー」が展開するカフェ。JR「恵比寿」駅から徒歩約5分のホテル「プリンススマートイン恵比寿」の1階にあります。

ホテルのエントランス近くにあるカフェには絵の具をパレットに落としたかのような色とりどりのフルーツが並ぶ冷蔵ケースが。その前では「どれにしよう…」と目移りしながらフルーツサンドを選ぶ楽しみが待っています。あれもこれもと候補を選んでもチョイスに時間のかかる、ある意味贅沢なひととき。

今回いただいたのはナガノパープル、桃、宮崎マンゴー、シャインマスカットの4種。
「ダイワ」のフルーツサンドは目利きが選んだ上質なフルーツが惜しみなく詰め込まれているのが身上。たっぷりの生クリームを凌駕するダイナミックさを持ち合わせていながら、カットされた断面はグラマラスで美しい! SNSで人気を集めているのも納得です。

ナガノパープル(840円)、桃(680円)、宮崎マンゴー(700円)、シャインマスカット(1,000円)

フルーツを挟むパンもほんのりと塩気を感じさせるもの。フルーツ、生クリーム、パンが渾身の三位一体となり、口のなかをトロけさせてくれます。本記事を企画・撮影を担当したフルーツ好きのS嬢はこのカフェで晴れてフルーツサンドデビュー。

「以前から気になっていたダイワのフルーツサンド。果肉が肉厚で食べ応えがあり、とても美味しかったです。何か特別な日や自分へのご褒美に食べるのもよいし、手土産にしても喜ばれそうだなと思いました」と話します。

厨房が空いている時間帯であれば、購入したフルーツサンドをカットしてもらえる

青果店が母体となったカフェだけに、フルーツサンド以外のデザートも用意されています。その日、市場で仕入れた旬のフルーツをふんだんに使ったグラスデザートはカフェに足を運んだ人だけが楽しめる甘美なひととき。その日の仕入れ状況によってメニューは変動するようですが、桃の旬の時期に行列ができるほど大人気なのが、桃がまるまる1コ、ドカン!と乗ったかき氷「桃富士」。そして、いちじくの旬には果肉がグラスにぎっしり詰め込まれた「いちじくソフト」など。

これを目当てに行列ができる「桃富士」( 2,850円)

本マガジンを運営する株式会社アイネスト管理部に所属し、いつも編集部をサポートしてくれるS・Eさんはコンビニスイーツ(とくにアイス!)の新作チェックを欠かさないスイーツ愛好家。幼い頃からお母さんお手製のシフォンケーキやゼリーなどを食べて育ったそうです。

「今回、木々が気持ちよく茂るテラス席でこれでもか!というくらい旬の桃がふんだんに盛り付けられている『桃富士』と『いちじくソフト』を食べました。桃富士は、氷の上に丸ごと1コの桃が乗っていて迫力満点。食べごろのものが使われ、桃本来の香りと甘さを充分に楽しむことができました。また、細かくカットした桃の果肉が氷の周りにコーティングされています。まさに桃尽くしです。

いちじくソフトはこちらも完熟いちじくがたくさん。トロッとした果肉を邪魔しないソフトクリームもとてもなめらかで濃厚。ミルクの味わいが絶妙でした。

お店の「ダ」の文字をデザインした力強い印象のロゴには『妥協せず選りすぐったフルーツたちを自信をもってお届けしています』という思いを感じますね。実際にデザートを食べるとその姿勢がロゴに表現されていることに納得できます」

完熟したいちじくを堪能できる「いちじくソフト 」(1,600円)

美味しいフルーツに出会ったら五感で大切に味わい尽くしたいものです。そして記憶に刻まれる、その甘やかでジューシーな魅力のトリコになってまた1つ、もう1つ…。

もうすぐ馬も人も肥ゆる秋です!

information

ダカフェ 恵比寿店
東京都渋谷区恵比寿南3-11-25 プリンススマートイン恵比寿1階
www.instagram.com/daiwa_sosuke?hl=ja