陽光がトーンを落とし、日が暮れかけた夕暮れ時。
イタリアの街角にあるバールのバンコ(カウンター)では老若男女が肩を寄せ合いエスプレッソやワイン、リモンチェッロなどのグラスを傾けながら、皆が思い思いの時間を過ごします。

イタリアの人々の日常と人生が交差するバールを思わせるのが、世田谷線・松陰神社前駅のほど近くにあるイタリアンレストラン「Gigio(ジージョ)」です。
ドアを開けると目を引くのは、重厚な木造りのバンコ。
夜は立ち飲み客が止まり木のように連なって、エネルギッシュな賑わいを作りますが、朝を迎えると、夜の活気とは打って変わり、ひとりひとりが自分だけの時間をゆっくりと味わう場所に変わります。

ドアを開けると広がるのは、この景色。ここで注文と会計を済ませれば、席まで運んでもらえる

ヴィスコンティ監督の名画『ベニスに死す』に描かれる、朝食でさえ正装を求められる格式高い空気とは対照的に、ここで感じられるのはもっと日常に近い空気感。肩肘張らず、自然体で過ごせる朝のひとときが広がっています。

夜とはまったく異なる穏やかな表情を見せる店内には、カップルやママ友たちが語らう光景も。近所の人々が集う朝の社交場としての温かな雰囲気が漂います。

夜の喧騒を脱ぎ捨て、朝は静かな呼吸を取り戻すバンコのある店内

そんなジージョで1日をスタートさせるなら、ぜひ味わいたいのがモーニングメニュー。
店先に掲げられた「colazione(コラツィオーネ、イタリア語で朝食)」が表すように、8時から13時まで提供される食事はブランチとしても利用できます。

テイクアウトする人もいる「パニーノ」(900円)は、ローマの定番・ロゼッタパンにモルタデッラハム、クリームチーズ、ルッコラを挟んだシンプルなサンドイッチ。
外側は香ばしく、中はふんわりと軽やかで、一口かじると塩気とまろやかさ、ルッコラの爽やかな苦味が広がります。

ぎっしりと具材が詰まったパニーノ。お願いすれば食べやすくカットしてもらえる

銀色のトレーで提供される「モーニングプレート」(900円)は、トーストとサラダのセット。
ブリオッシュトーストはバターの香りが豊かで、しっとりとした食感。ひよこ豆とオリーブを使ったサラダは朝の身体をやさしく目覚めさせてくれます。

かじった瞬間、バターのほのかな塩気が広がるブリオッシュトーストが主役のプレート

また、おなかに余裕があれば、イタリア発祥のお菓子なんていかがでしょう。

イタリアで腕を磨いたシェフによる自家製のイタリア菓子もお楽しみのひとつ!

シチリアの郷土菓子「リコッタチーズのカンノーロ」(500円)は、筒状のパイ生地の中にクリームがたっぷり詰まった甘やかさ。さっくりとした生地と軽やかなリコッタクリームが口の中で溶け合います。

「リコッタチーズのカンノーロ」(左)と「スフォリアテッラ」(右)。どちらも本場仕込みの味わい

「スフォリアテッラ」(350円)は、貝殻のような層を持つパイ。
オレンジピール入りのリコッタチーズを包み込み、爽やかな香りが広がります。

朝に甘やかなひと口を添えるだけで、1日の始まりが少し特別に感じられる…。そんなお菓子を口に入れると、その甘みが心をほぐし、気分が高揚するのはいうまでもありませんね。

ドリンクは別料金。しっかり食べたい時は、スープ(500円)を追加するのもおすすめ

さて、あたたかみのある店内でリッチな気分を引き立ててくれるのは、長いベンチソファ。背もたれまで覆う懐かしい色合いのファブリックが、クラシックな雰囲気を醸し出しています。

奥まった場所に設けられているのは照明の光がきらめくガラス張りのワインセラー。空間を引き締めるインテリアとしても存在感を放っています。

壁には光の当たり方によって濃淡が変わり、奥行きのある表情を生み出すソファが連なる

ジージョで迎える朝は、日常をほんの少し上質に変えてくれる余白時間。
丁寧に焼き上げられたパンの香ばしい香りと、深みのあるコーヒーの湯気に包まれてみませんか。

バンコの脇にあるグラス棚の上には小さな「トッポ・ジージョ」が。大人の空間に思わず微笑んでしまうアクセント

今夏も全国各地で最高気温が更新されるというニュースが世間を賑わせました。
ジージョで朝食を楽しんだあと、もし暑さを感じたら、近くにある世田谷区役所のクーリングシェルター(お休み処)を訪れてみてはいかがでしょう。
涼しい場所でひと息つくことで、朝食後の街歩きを快適に楽しむことができます。

世田谷区役所のお休み処に展示されている世田谷区名誉区民の写真を見るのも楽しい
information

Gigio
東京都世田谷区若林4-24-19
03-6805-4949
https://www.instagram.com/gigio_shoinjinja/