城南地区はもとより、東京23区唯一の渓谷として知られる等々力渓谷。
東急大井町線「等々力」駅からほど近い橋の脇に設けられた階段を下りていくと、視界に飛び込んでくるものはおびただしい緑!そして木の深々としたにおい。渓谷に渡された遊歩道に降り立てば晩夏とはいえ、思わず両腕をさすってしまうほどです。等々力駅付近より気温が2℃も低い渓谷はいつ来ても緑の魔界さながら。
台地との標高差が約10mという渓谷は立川市から大田区まで続く延長約30kmに及ぶ斜面地「国分寺崖線」 のなせる自然界のアート。多摩川が10万年以上という果てしない歳月をかけて、武蔵野台地を削ってできたもので、南端にあたる等々力渓谷には樹林地帯に湧水、地層断面などが見られます。この国分寺崖線に沿った高台は明治期以降、富裕層の邸宅地として発展してきました。流れ落ちる水がとどろいたから「とどろき」と付けられた等々力もまた、緑と水が豊かな渓谷のある高級住宅地として知られています。
谷沢川を挟んで、約1kmにわたって形成されている渓谷の湿地帯にはシラカシやケヤキ、ムクノキ、コナラやイヌシデなどが繁茂しています。
そんな等々力渓谷の豊かな緑に親しめるレストランがイタリア料理店「OTTO」。
渓谷の途中に看板が立てかけられ、階段を上るとお店に行くことができます。なお、階段を上りきった視界に広がるのは環八。道幅の広い道路に車がひっきりなしに走る光景は渓谷の鬱蒼とした緑とのギャップを感じないではいられません。大都会に迷い込んでしまった、森の中で生まれ育った動物の気分が一瞬味わえるかも。
OTTOの扉を開けると意外にも店内は奥に長く、やさしいクリーム色を基調に統一されています。
目を引くのはなんといっても窓側のテーブル席。大きなガラス窓の外は渓谷を作る樹木の豊かな緑!この日のランチタイムはこの席から埋まっていきました。
ランチタイムは3種のメニューが用意され、前菜やスープ、ガス窯で焼き上げるピザやパスタなど、カジュアルなイタリアンが楽しめます。
もし、おなかに余裕があればぜひ、前菜のついたセットを。アヒージョやカポナータ、サラダ、チーズ、ミニスープなどが大きなお皿に盛り付けられた前菜に、パスタかピザのどちらかを選ぶことができます。
赤色のクロスの上に置かれた白いお皿、そして窓の向こうの緑といった配色はイタリアの国旗のよう。ちなみにイタリア国旗の三色にはそれぞれ意味があり、赤は情熱と博愛、白は雪と平等、緑は国土と自由なのだとか。
シェフの丹念な仕事におなかが満たされた後はシメのドリンクをいただきながら窓の外に広がる渓谷をのんびりと、ぼんやりと見つめる時間。そうしているとスマホやPCの画面では得られないもの…裸眼の奥から潤っていくのを感じます。こんな体験こそOTTOで食事をするの醍醐味なのかもしれません。
Information
OTTO
世田谷区野毛1丁目17-11 等々力渓谷スカイマンション B1F
TEL 03-3704-3778
https://otto-todoroki.com