3月は世界的に女性を祝う特別な日がいくつかあります。

まず、日本においては女の子の成長を祝う「ひな祭り」(3月3日)。別名を「桃の節句」といい、これはこの時期に桃の花が咲くことから。
平安時代に端を発するこの行事は明治時代以降、ひな壇に雛人形を飾るスタイルが一般化しました。

「国際女性デー」(3月8日)は世界中で女性の社会的、経済的、文化的な貢献を称え、ジェンダー平等の重要性を再認識する日です。イタリアでは「女性の日」で、男性から女性に旬のミモザをプレゼントする風習があり、国際女性デーでもミモザがシンボルとなっています。

おなじみの「ホワイトデー」(3月14日)は日本発祥の文化。
バレンタインデーにチョコレートをもらった男性がお返しをする習慣ですが、年賀状と同様、お返しも減っていきつつあるとか。最近ではバレンタインデーを「友チョコの日」とする人もいるから、これからどんどんギフトのカタチも変化していきそうです。

また、イギリスでは3月の第4日曜日が「母の日」。この日は母親に感謝の気持ちを伝えるために花の贈り物や食事を楽しむ習慣があります。

女性を祝う日には食文化が重要な役割を果たしています。
たとえば、日本ではお米やお餅が特別な意味を持っています。ひな祭りではお米を原料とする「ひなあられ」や「ひし餅」、「甘酒」などをいただきますが、それぞれが女性たちの健康や幸福を願うものとして、昔から大切にされてきました。

本誌で紹介した「タケノとおはぎ」の美しい意匠を感じさせるおはぎ

なかでも、まるいお餅は「円満」や「調和」の象徴とされています。
それは人間関係にも大切な要素。「まるい心」を持つことができれば、人間関係はぐっと円満になるはず。ゆるやかに、しなやかに接することは人とのつながりをより豊かにさせるのではないでしょうか。

小田急線「代々木八幡」駅と東京メトロ「代々木公園」の間にある小さな路地にひっそりと佇む「あいと電氣餅店」。
1916(大正5)年創業時の伝統製法を受け継いだ女性店主が化学保存料や添加物を使用せずに丁寧に仕上げるお餅の数々は、どこか母性や慈愛を感じさせるものばかり。店名の「あいと」には「愛をもって」という意味が込められています。

福島県南相馬市がルーツの「あいと電氣餅店」。電氣餅の名は電動餅つき機から

お店を訪ねると、店頭奥にある厨房でスタッフの皆さんが愛を込めて丁寧に作っている気配がそれとなく伝わってきました。

C型の白いカウンターに商品が並ぶ店内。購入は現金の使用不可でキャッシュレスのみ

「苺生大福」(500円)は契約農家から直送される馥郁たる苺とこしあんが絶妙な調和を奏でる甘み。ふわふわのお餅に包まれた大福を一口頬張れば豊かさと祝福の気持ちが広がるようです。

餅米は新潟産こがねもち、あんは北海道産小豆を用いる。「苺大福」は賞味期限5時間の人気商品

お碗でいただく「3種類餅お汁粉ぜんざい」(820円)には3種のお餅を使用。それぞれの餅が持つ風味が小豆の甘みと絡み合い、心がそっと温められます。

ぜんざいはこしあんまたは粒あんを選べる。3種のお餅は季節によって種類が変わる

さらに、「みたらし餅」(380円)も欠かせません。こちらは甘じょっぱく、素朴でありながらも深い味わい。醤油の原料である大豆とお米の恵みが、みたらし餅というプラットフォームで出会うことに喜びを感じずにはいられません。

トロリとした食感のお餅とみたらしのタレの組み合わせは風味絶佳

お店ではカウンターが空いていればイートインも可能。
純白の壁には水墨画アーティストCHiNPANさんによるアートが描かれ、ミニマムな空間に独特の美しさを添えています。大胆と繊細が融合する筆使いが和の雰囲気を醸し、訪れる人々の目を楽しませています。

お店の外からも見える黒色の水墨画アートは実際に入店するとそのダイナミックな筆致に圧倒される

女性を祝う日が多い3月。
まるい心を込めた、まるいお餅の甘味を大切な女性に届けたいものです。
きっと、祝福を込めた特別な贈りものになるはずです。

INFORMATION

あいと電氣餅店
東京都渋谷区富ヶ谷1-3-4
03-5738-7849
https://denkimochi.com