2026年2月上旬、土曜日の朝10時30分。
東京モノレールの「大井競馬場前」駅に降り立った途端、改札を抜ける人の多くが外国人であることに、まず驚嘆。
聞き慣れないさまざまな言語の波に呑み込まれそうになり、ここが東京であることを一瞬忘れそうになります。

そして目指すのは馬が颯爽とダートを駆け抜ける競馬場……ではなく、その駐車場で開かれる「大井競馬場TokyoCityFleaMarket」です。ほぼ毎週末、9時から14時30分まで開催されるこのフリーマーケットは都内最大級といわれ、フリマ愛好家の間では“聖地”のような存在。掘り出し物を求める人々が早朝から集まります。

会場に一歩足を踏み入れると、まず圧倒されるのはその広大さに加えて、観光客やバイヤー、ヴィンテージ好きと思しき若者、家族連れによる熱気!
地面に広げられたシートの上にも、立体駐車場のフロアにも、ぎっしりとブースが並び、人の流れが途切れることがありません。

オープン前の7時ぐらいから掘り出し物を狙う人たちが集まり始める

フリマに並ぶ品物は、新品・中古品・手作り品まで実にさまざま。
古着の山の隣には日用品やマニア垂涎のコレクターズアイテムや昔懐かしいおもちゃがあるかと思えば、ブランドの食器や本、国内外の雑貨、工具、レコード…。ジャンルの幅が広く、見ているだけでも飽きません。
出品アイテムは約10万点以上ともいわれ、すべてをじっくり見ようと思ったら1日では足りないほど。なかには農産物を並べる出店者もあり、市場のような一角も見られます。

パッチワークで遊び心を加えたリメイクデニムの数々
野菜や果物が並ぶ一角は、まるで小さな朝市のよう

また、このフリマには車での出店が可能なため、家具や家電、衣類のまとめ売りなども目立ちます。車のトランクも什器の代わりになり、いわば“動く倉庫”がそのまま店になったよう。

週末にはフリマの拠点となる車。フレキシブルな空間使いが楽しい

そして、人が集まる場所には食の楽しみが欠かせません。
立体駐車場付近にはバラエティ豊かなキッチンカーが並び、胃袋をくすぐる香りがそこここに漂っています。来場者にイスラム圏の方が多いことを意識しているのか、ハラル対応のメニューを出すキッチンカーも。フリマの国際性が表れています。

フードもフリマのお楽しみ。国際色豊かなキッチンカーがずらりと並ぶ

この大規模なフリーマーケットを運営するのは「株式会社東京リサイクル」。
1990年の創立以来、フリーマーケットを軸にしたイベントの企画・運営を担ってきました。大井競馬場での開催は今年で31年目を迎えるそうです。
東京リサイクル取締役の赤池正行さんは「最初は月1回、100件ほどの規模から始まりました。創業時から同じ場所で出店し続けている方もいますね。出店者と運営側が一緒に成長してきました」と話します。

立体駐車場の一角。使い込まれた道具から出所不明の珍品まで無秩序に集結
コレクターにはたまらない、懐かしのキャラクターが所狭しと並ぶ光景

来場者は1日平均で1万〜1万2千人。
この規模だけでも圧倒されますが、さらに驚かされるのは、その約半数を外国人が占めているという点です。英語をはじめ、中国語や韓国語、東南アジアの言語、さらには中東圏の言葉までが飛び交い、アジア最大級といわれるタイ・バンコクの「チャトゥチャック・ウィークエンド・マーケット」を彷彿させるカオスな熱量が渦巻いています。トーキョー観光の途中に立ち寄る人もいれば、このフリマを目的に訪れるリピーターもいるそうで、その求心力の強さがうかがえます。

掘っても掘っても終わらない古着の山!宝探しは体力勝負である

また、客層は近年の古着やヴィンテージブームが追い風となり、10代〜20代の若い世代が全体の約3割を占めるそう。その一方で、家族連れや年配の方の姿も多く、世代の幅が広いことも特徴。どの年齢層にとっても、掘り出し物に出会える場所であることが心をつかんでいるようです。

取材に訪れた日は雪の影響で、立体駐車場は1階のみ使われていましたが、それでも約520店が出店。悪天候でなければ、2階も使用し、出店数は700店以上になるそう。通路を進むたびに景色が変わり、思いがけない一点ものに出会えるかもしれない…そんな期待が背中を押し、つい歩みが止まりません。

カゴの中にあふれんばかりのビビッドな色彩が目をひくフライトタグ
外国人に人気のある着物や羽織がずらりと並ぶブース

立体駐車場の一角で、70~90年代を中心にしたレコードやロックTシャツを並べるブースに遭遇しました。
店主の方に話を聞くと「知り合いの娘さんからここでフリマが行われていることを聞いたのがきっかけで、1年前から毎回参加しています。エリアナンバー入りの看板は場所を覚えてもらいたくて毎回作っているんです」とのこと。常連客とのつながりを大切にしている様子が伝わってきます。

エリアナンバー入りの看板を毎週変えるレコードショップ

単なる売買の場ではなく、人と人との関係が積み重なって作り上げられたコミュニティ。その信頼関係が、このマーケットの骨格になっているようです。

大量生産・大量消費の時代にあって、誰かが使っていたモノを次の誰かが受け継ぐ場所。
大井競馬場のフリーマーケットは人と文化が行き交う交差点なのかもしれません。

information

大井競馬場TokyoCityFleaMarket
東京都品川区勝島2-1-2 大井競馬場第一駐車場
https://trx.jp