東急田園都市線「駒沢大学」駅西口から少し歩いた、住宅街の一角。
道幅の狭い通りに、黒板や古木、出窓が外観のアクセントになった一軒家が建っています。思わず足を止めてしまうような、さりげない存在感を放っているのが、おかずケーキ専門店「Coven(カヴァン)」です。

受付と販売は、通りに面した1階の小さな窓口で行われます。
イートインスペースはなく、販売はテイクアウトのみ。その潔さが、この店の姿勢を物語っているようにも感じられます。おかずケーキだけでなく、お弁当の販売もあり、買い求める人がしばしば訪れるのは、このお店が日常の地元の暮らしに自然に溶け込んでいることの表れでしょう。
お店のおかずケーキは、フランス生まれの「ケーク・サレ」同様、甘さを抑えた生地にお惣菜を閉じ込めたもの。ですが、カヴァンのそれは、より日本の食卓に寄り添った感覚を感じさせます。洋の技法を下敷きにしながら、和・洋・中の惣菜を自在に取り込み、きちんと「おかず」として成立しているのです。
カヴァンのおかずケーキが、とりわけ心をつかむのは、箱を開けた瞬間。
ギフトボックスのなかには色とりどりのおかずケーキが整然と並び、その光景は思いがけない贈り物を渡された時の高揚感そのもの。

メニューが記されたピックも、サプライズの名脇役。
「ナポリタン」(370円)や「筑前煮」(380円)といった、思わず「こんなものも!?」と歓声が上がりそうな意外性のあるラインナップも加わり「どれから食べる?」と自然に会話が生まれる引力を放っています。
見た目は、愛らしいカップケーキ。
しかし、カットして断面を目にした瞬間、再び心をつかまれます。
スポンジの中に詰め込まれているのは、旨味をたっぷり含んだ具材とソース。そのギャップが、食べる楽しさを一層引き立ててくれます。
たとえば「オニオングラタンスープ」(350円)は、玉ねぎの甘みがじっくり引き出され、口に運ぶたびに深いコクが広がります。
風味豊かに煮込まれたお肉の存在感が際立つのは「ビーフシチュー」(430円)。大きめのエビがごろりと入った「エビチリ」(420円)は甘みとほどよい辛みが生地全体に行き渡ります。どれもポーションは小さめですが、一品としての満足感は想像以上。メインディッシュといってよい味わいです。

そんな充足感に満たされた後に欲しくなるのは、やはり心ほどける甘み。(いわゆる“別腹”というやつです)
実は、カヴァンのおかずケーキにはスイーツ系の具材も用意されています。
お惣菜系とは異なる表情で、食後の楽しみを広げてくれる存在感。
「ごまだんご」(350円)は、香ばしい黒ごま風味の生地のなかに、お団子がドンと鎮座。
その豪快な断面に、思わず見入ってしまいます。甘さは控えめで、普段、あんこを食さない方にもぜひ味わっていただきたいものです。

もうひとつは「チョコバナナカスタード」(430円)。
名前を聞いただけで想像がふくらむこの組み合わせは、しっとりとした生地とチョコレートのコク、バナナとカスタードの甘みが重なり合います。
新年のおもてなしや親しい方への手土産として、これほどユニークで美しい見た目のものは、なかなかありません。
テーブルに配するなら、写真のように紙製の赤い折敷や金色のコースター(おかずケーキのサイズにちょうど良いです!)にのせるだけで、テーブルがぱっと華やぎ、特別なおもてなしの場に早変わりします。


カヴァンの営業日は、木・金・土曜日の週3日間のみ。
訪問前にはインスタグラムをチェックするのがおすすめです。
テイクアウトの際は冷凍、もしくは温めて受け取ることも可能です。
日常に小さなときめきを添えてくれる「おかずケーキ」は特別な日にも、自分へのささやかなご褒美にも、心に残る味わいを届けてくれるはずです。
INFORMATION

カヴァン
東京都世田谷区上馬4-5-2
03-5431-5877
http://ocazucake.com/
