和菓子とフルーツの組み合わせで、真っ先に思い浮かべるのは「いちご大福」ではないでしょうか。日本伝統のおもちとあんこ、そしてフレッシュないちごが三位一体となった和菓子が誕生したのは1986年頃(昭和後期)といわれていますが、発祥の地やお店は定かではありません。が、いちご大福の製造方法について特許を保有している会社があるので、かなり本腰を入れた商品開発だったと思われます。いちごの酸味とあんこの甘みの絶妙なバランスの大福は登場した途端、センセーショナルな存在となり、和菓子の1ジャンルを確立しました。

国道246号線から

2020年に世田谷区上馬に開店した「弁才天」のフルーツ大福もいちご大福の系譜を汲む和菓子。羽二重粉が使われる求肥が白あんと季節のフルーツを包んでいます。国道246号沿いのお店には開店以来、大福を求める人々が列を作り、通りがかる人たちの興味を引いています。

専用の餅切り糸を大福に巻きつけて、縛りつけながら切っていくのですが、これには「思いきり」が大切。「失敗したらどうしよう…」なんて気持ちは無用です。潔い心もちで糸をもち、少々力を入れてエイヤッ!と糸を交差させながら縛り切ると、キレイな断面が生まれます。ただし、みかんのように袋やかたいスジのあるものは、包丁に手伝ってもらった方がベター。

なんといっても、お楽しみはフルーツ大福を食す直前。
みかんは強敵…

半分にカットしたフルーツ大福を並べていくと…その美的な切り口に息を飲んでしまいます。同時に春の訪れを感じ、コロナ禍で大変な世の中だけど着実に春はやって来るのだなと、求肥と白あんに包まれた果実の色彩や果汁の滴りに大自然の息吹を感じてしまったり。フルーツ大福の醍醐味は切り口にあるといってもいいでしょう。

こうしてカット作業を終えた大福をいただくと、口のなかに求肥と白あん、フルーツが溶け合い、しばし瞑目。その味わいに集中してしまいます。産地にこだわり、旬の果物を仕入れて作られている大福だけに、普段味わえないようなフルーツに出会えるのも嬉しい体験です。とくに「檸檬」大福はなんと!生食ができる品種で、静岡県で5軒の農家さんしか作っていない希少なものだとか。レモン特有の酸味はなく、ハッサクを思わせる果肉が爽やかな風味。また、佐賀県で生産されている高級ないちご「白い宝石」を使った大福は果肉の糖度が高く、その甘みは白あんと求肥のコンビネーションと好相性。

そんなフルーツ大福を送り出している「弁才天」の店名は海や川など、水に関係の深い女神の名前から。水は流れ去っていくもの、汚れを落とすもの、循環させていくもの。日本には人との関係を再び構築する慣用句に「水に流す」というものがあります。そんな思いをこめて、関係を改めて築きたい相手とお店のフルーツ大福を一緒にいただくのはいかがでしょうか。

Information

覚王山フルーツ大福「弁才天」三軒茶屋店

東京都世田谷区上馬1丁目4-13

03-6450-7327

https://benzaiten-daifuku.jp/