まるで小高い丘!

小田急線「梅ヶ丘」駅北口からすぐの「羽根木公園」に足を踏み入れると、こぢんまりとした丘陵が続いています。その斜面を覆うように植えられているのが梅の木で、その数、約700本!約60品種が息づき、見事な梅林を形成しています。実は梅ヶ丘の駅名もこの梅林に由来するもの。地域の宝ともいえる梅を楽しむため、毎年2月中旬頃には梅祭りが開催されます。(2021年はコロナ禍の影響で中止)

紅梅の花言葉は「優美」。白梅の花言葉は「気品」。

梅の香りもその花言葉を想起させるような上品な甘酸っぱさで、とくに原種に最も近い野梅から変化した「野梅系(やばいけい)」は梅らしさを感じる香りの代表格。道知辺(みちしるべ)や初雁(はつかり)などの品種を見つけたら、匂いをかいでみるのもよいでしょう。

梅は「ジャスミン」や「イランイラン」と同じ香りの成分。ちょっと意外ですが、この成分は多幸感をもたらす効能が期待できるそう。今は花見といえば桜ですが、昔は「梅」を愛でることが花見といわれた時代もあり、きっと当時の人たちは愛らしい梅の花とともに香りを楽しみ、心を癒されていたのではないでしょうか。

羽根木公園ではかなりの数の梅が見られますが、梅は桜がいっせいに満開になるのと違って、早咲き、中咲き、遅咲きのものなどさまざま。品種によって満開の時期が異なります。実際、公園の梅林を歩いてみると、これから咲きそうな品種に横にすでに見ごろを終えた種があり、梅のマイペースな感じに人間味!?を感じてしまいます

プレーパーク

羽根木公園には梅林のほか、軟式野球場やテニスコート、プレーパークというちょっと変わった子どもの遊び場などがあります。別名を「冒険遊び場」というプレーパークは、デンマークの造園家ソーレンセンが子どもの遊び方を観察して設計されたのが始まり。「きちんと整備された公園よりもガラクタの転がった空き地でのほうが子どもたちは喜んで遊ぶ」という考え方に基づき、ヨーロッパを中心に 1950年代あたりからプレーパークは作られてきました。

実は日本で最初にプレーパークが誕生したのがこの羽根木公園。ここで木に吊り下げられたブランコや木造のすべり台などで遊ぶ子どもたちは本当に楽しそう!羽根木公園のなかでもひときわ有機的な空間といえます。

さて、羽根木公園といえば、辻仁成と江國香織による小説『冷静と情熱のあいだ』を思い出す方もいらっしゃるかもしれません。小説では主人公のひとり、順正が学生時代に暮らしたアパートが羽根木公園のそばという設定でした。彼と恋人のあおいが夜、羽根木公園を散歩する場面が登場するのですが、それが梅の季節だったら、紺色の夜空にきっと甘い香りが放たれていたかもしれません。梅の季節の羽根木公園はそんなロマンチックな気分に浸れます。

 

羽根木公園

東京都世田谷区代田4- 38-52